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Q&A形式で学ぶOpenFlow/SDN 第2回

OpenFlowがもてはやされる理由

SDNを牽引するOpenFlowとは?業界へのインパクトは?

2013年06月04日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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オーバーレイとホップバイホップの違いは?

 OpenFlowでは「オーバーレイ」と「ホップバイホップ」という2つの方式をサポートしている。既存のネットワークからの移行やフォーカスする機能によって、一長一短がある。

オーバーレイ方式とホップバイホップ方式(NCLCの資料より抜粋)

 オーバーレイ方式は既存のネットワーク上にエッジ同士のトンネルを構築し、ネットワーク仮想化を実現する方法だ。既存のネットワーク機器をOpenFlow対応のものにリプレースする必要がなく、通信するエッジのみがOpneFlowに対応すればOK。仮想マシン上で動作するOpen vSwitchなどを導入すればよいので、汎用サーバーとソフトウェアのみで完結するソリューションといえる。

 オーバーレイ方式はネットワークの仮想化に重きが置かれており、物理ネットワークの課題解決にフォーカスしているわけではない。もちろん、サーバーは仮想化されている環境が前提だ。さらに既存のネットワークをそのまま流用するため、OpenFlowのメリットである高度な経路制御は行なえない。

 VMwareに買収されたNiciraの「NVP」のほか、ビッグスイッチ、ストラトスフィア、ミドクラなどの新興ベンダーでオーバーレイをサポートしていることが多いが、最近では後述するホップバイホップ方式に対応した製品も多い。

 一方のホップバイホップ方式は、OpenFlow対応スイッチをネットワークに導入することで、OpenFlowコントローラーが仮想スイッチだけではなく、物理スイッチまで一元的に経路制御する形態。スイッチを新たにリプレースする必要があるが、顧客ごとの詳細な経路制御やネットワークの仮想化など、OpenFlowが提供するメリットをすべて享受できる。いち早く対応したNECをはじめ、HPやブロケードなどがOpenFlow対応スイッチを展開している。

 現状では、ネットワークリプレースの進捗状況やOpenFlowに求める効果によって、オーバーレイやホップバイホップのいずれかを選定するということになる。ただ、両者をサポートする製品も増えており、将来的には両者を意識する必要がなくなってくると思われる。

OpenFlowのインパクトとは?

 マーケットという観点で見たOpenFlowのもっとも大きなインパクトは、やはりネットワーク機器のコモディティ化を加速する点である。

 もとより大規模なネットワークを運用するデータセンターにおいては、オープン化や大量調達によって安価なネットワーク機器を導入しようという動きが加速している。また、パケット転送を制御するASICを自社開発するベンダーはすでに少なくなっており、スイッチ製品の差別化はきわめて難しい状況だ。

 こうした状況の中、データセンター向けのネットワーク機器がいまだに高価な理由は、さまざまなメトリックスに基づいたリッチな経路制御機能を持ったソフトウェアを搭載しているからにほかならない。しかし、OpenFlowのアーキテクチャでは、スイッチは単にコントローラーからの指示に従ってパケット転送のみを担う存在であり、リッチな経路制御機能は不要だ。単にOpenFlowプロトコルを解釈し、フローテーブルに従って、パケットを転送すればよいからだ。

 これに伴いマルチベンダー化も進行する。OpenFlowの規格に従っていれば、特定のベンダー製品を用いる必要はないからだ。実際、Pica8のようにコモディティ化された安価なOpenFlowスイッチも登場しており、製品導入の選択肢の1つとなっている。

オープンソースソフトウェアの採用により、コモディティ化を実現したPica8のスイッチ

  次回は、SDN/OpenFlowの最新動向について、Q&A形式で解説していこう。

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