AMDが期待を寄せる
KabiniとTemash
AMDが大きく期待しているのが、5月23日に発表したKabiniとTemashである。「Temash」はタブレット向け製品なのでPC向けは「Kabini」になる。Kabiniは第2世代のBobcatコアであるJaguarにGCN、つまり「Radeon HD 7000」シリーズのGPUを組み合わせ、さらにHSAに正式対応したメモリーコントローラーを含むシステム構成をとった最初の製品だ。
プロセスもTSMCの28nm世代を利用しており、大きく性能の改善と消費電力の削減を行なうことに成功している。AMDがどの位この製品に期待しているかは、製品ラインナップを見ても明らかである。
従来の場合、A4/A6/A8というラインナップはTrinityが担っており、Zacate 2.0はE1/E2という一段下のグレードの扱いになっていた。実際そのくらいの性能差があったのは事実である。
ところがKabiniではハイエンドがA6、次がA4ということになっており、2コア/1モジュール構成で3.6GHz駆動の「A6-5400K」と、4コア構成で2GHz駆動の「A6-5200」の間にそれほど大きな性能差がないと認めたことになる。
こうなってくると、プラットフォームの互換性こそないものの、より低い消費電力がメリットとして利いてくるわけで、ことバリュー向けなどのローエンドはTrinity/Richlandに代わってKabiniがこのポジションにつくことが明確にされた。「A65」相当のFCHも内蔵しているため、部品コストや実装面積の観点でも大分有利であると同社は判断しているようだ。
このKabiniは現時点では「A6-5200」と「A4-5000」、「E2-3000」と「E1-2100/2500」の5製品がラインナップされている。
Silvermontの競合製品
Kyotoこと「Opteron X」シリーズ
図には出てこないが、5月29日にはこのKabiniをそのまま使う形で「Opteron X」シリーズの2製品、「X1150」と「X2150」が発表されている。
E1/E2/A4/A6との大きな違いは、L2およびメモリーバスがECCをサポートしていることである。そういえば2011年にJohn Fruehe氏が「もしサーバー向けにAPUをリリースすることがあれば、そのAPUにはECCメモリーが使われることになる」と語っていた(関連記事)。そんなわけでKaberiは当初からサーバー向けを念頭にECCのサポートが含まれており、デスクトップ向けでは無効化していたのを「Opteron X」シリーズでは有効にしたのであろう。
この「Opteron X」シリーズは、インテルの「S1200」シリーズや、今年中に投入される予定の「Silvermont」の競合製品となる。Silvermontの話は連載202回で紹介しているが、「S1200」シリーズの方はむしろ連載200回の方がわかりやすいだろう。
ターゲットとするのはマイクロサーバーや小型NASの分野である。この市場にAMDはARMベースのOpteronを2014年に投入するというのは連載181回で紹介した通りであるが、2014年まで手をこまねいていたら市場を奪われてしまう。
こうしたマイクロサーバーの市場も現時点ではx86ベースのものが大量であり、ARMベースのものはソフトウェアの充実も含めてこれからという状況なので、少なくとも2014年はまだx86の方が主流である。そうしたマーケット向けという風に考えれば良いだろう。
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