紙ならではを感じた2つのメリット
校正作業と周囲の人に見せやすいこと
ここまで紹介してきたように書籍を作る作業をKDPを使って行ないましたが、非常に手軽でこなれたプロセスだと感じることができました。長い文章をまとめなければならないため、すぐに誰でもできるというわけではないかもしれませんが、無料や短い本など、さまざまなパッケージングが可能で、今までの紙の本のスタイルにとらわれることなくコンテンツをまとめることができるため、可能性が眠っていると言えます。
今回の本では特に意識しませんでしたが、KindleやiPhone、iPadなどのスマートフォン・タブレットはネットにつながっており、Kindleアプリにもソーシャル連携機能があります。これらをうまく使うというアイディアも面白そうです。
しかし一方で紙の書籍との違いを感じる点が2つありました。
1つは校正作業。紙の書籍の場合、レイアウトをしてから紙の状態で校正を行うことができますが、電子書籍ではそういう勝手が利かず、誤字脱字を取り去るのに難儀しているところです。今後デジタルだけで本を作る体験が増えていけば、もっとこなれてくるのではないかと思いますが、まだまだ慣れていないといったところでしょう。
もう1つは、本を人に見せたりする方法が難しい点。本の場合、ぱっと手渡してぱらぱらと見てもらうことができますが、Kindleの場合、スマートフォンかタブレットを渡さなければなりません。AmazonのウェブサイトからダウンロードしてもらわなければKindleアプリで読めない点は手軽ではありません。Kindleで読むのは初めて、という友人も意外に多く、これから普及していけばそうした状況も変わるでしょう。
Amazonは23日に「Kindle Worlds」という二次創作用のプランを発表しました(関連記事)。原作のファンによる作品を公開し、原作者とロイヤリティーを分けるプランで、日本ではすでに同人誌などで市場として広がっているファンのパワーを作品に昇華させることができる仕組みとして期待しています。
ということで、皆様も1冊、いかがですか?
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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