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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第114回

東芝開発陣に聞く

渾身の「dynabook KIRA V832」はどう生まれたのか?

2013年06月06日 11時00分更新

文● 西田 宗千佳

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クオリティーの高さ、美しさを感じさせる、
一本筋の通った統一感

杉山氏 「重要なのは、そもそも『薄いこと』と、『できるだけそう見えること』です。大きさや薄さのイメージはディスプレーから来ます。ですので、画面の周囲を狭額縁化し、画面だけに見えるよう工夫しました。また、手前と奥ではアール(角の丸み)の大きさが違うんですよ。そうして、手に優しい形状を目指しつつ、他のUltrabookとは違うシルエットを目指しました」。

画面周囲の狭額縁化、本体のほうも手前側と奥ではアール(角の丸み)を変えるなど、薄さのイメージや本体シルエットにこだわった

設計開発センター デジタルプロダクツ&サービス設計第一部 グループ長 古賀裕一氏 「こうしたことは、デザイン上だけでなく、設計上も大きなチャレンジでもありました。品位を上げるために隙間などの精度を上げるということを、それぞれの部分で数値化して、各部の担当者に納得してもらう必要がありました。ここの隙間を半分に、ここの隙間を3分の1に、という感じです。そうした中で実際にはどこが気になるのか、設計者としても、普通ですと『そこまでこだわらなくても』という部分はあります。結局、20ヵ所くらいベンチマークをとって部品精度を上げました。従来に比べ50%くらいは、隙間や段差の精度が上がっています」。

設計開発センター デジタルプロダクツ&サービス設計第一部 グループ長 古賀裕一氏

 「高級感を感じるデザイン」というのはまさにその通りで、KIRAを手にすると、一本筋の通った「統一感」を感じる。単に見た目が良いだけでなく、キーボードやタッチパッドのクオリティも高く、特にキータッチの良さについては、ここの数年の東芝製品の中でも圧倒的にトップ、と断言できる。

 マグネシウム合金によるボディは、意外と金属光沢を保つのが難しい。そもそも腐食しやすいので、塗装をしっかりしなければいけないためだ。だがKIRAでは、あえて金属の質感が出る塗装を選び、まるでアルミ合金製のようなヘアライン加工にしている。

 一見普通に見えながら実は手が込んでおり、高級感がある。それこそが、KIRAが目指した方向性だ。それはすなわち、使っていてなかなか飽きがこないデザインを目指した、ともいえる。

 よく見ると、天板のロゴの大きさや位置も、目立たないものに変わっていることが分かる。今まで通り目立たせるのではなく、「大きく自己主張しないけれどそこにある」方向性を狙ったからだ。

 これらボディデザインに関する工夫は、すべて「質的な追求」が伴うもので、その多くがコストに直結する。これまでならば「コスト優先」であるがゆえにあきらめ、作り手の事情を優先してきた部分を「いかに良いものにして、結果、選んでいただくか」という方向性に切り換えたのである。

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