Google「お前ら、コンペティターだからな」
Googleが発表したメガネ型デバイス「Google Glass」は、よい企画を出した開発者向けの販売がスタートしています。Google本社があるマウンテンビューまで取りに行くという条件ですが、未来に触れられるとあれば、それは本社まで行きますよね。早速着用禁止などのルール整備に対する議論も始まり、新しいデバイスを技術者、社会が受け入れるきっかけとして注目しています。
そんなGoogleのコンペティターとして内外のメディアで大きく採り上げられたのがTelepathy Oneです。3月にテキサス州オースティンで開催されたSXSWで発表したこのデバイスは、Google Glassが急にダサく見えるほど、端正でクールなデザインと称賛され、メガネ型デバイスの話題を独占するはずだった帝国Googleに一矢報いたと言ってもよいでしょう。
それはGoogleとしても面白くありません。「競合だから」と言われたとチームを率いる井口氏はエピソードをふりかえりつつ、「競合ともコミュニケーションを取って、切磋琢磨する寛容さ、オープンさはシリコンバレーならではの魅力」と語り、Googleとの対決も楽しもうとしている様子でした。
Google、Appleが作るトレンドの中で
スマートフォン以降のコンピューティング環境は、GoogleとAppleによってその多くが定義され、市場化され、そして彼らがマジョリティーとなっています。ソーシャル分野にはFacebookが、クラウド分野にはAmazonがおり、MicrosoftやOracleなどとともに、世界のITがシリコンバレー周辺で動いています。
Telepathyはそうしたシリコンバレーで存在が知られたことのメリットをビジネス面やファイナンスの面で最大限に生かそうとしていますが、「日本発」のアイディアと技術にこだわる姿勢も崩していません。井口氏は「シリコンバレーに来てから日本を褒める言葉しか聞かない」と指摘します。日本にいるとどうしてもネガティブになりがちですが、悲観している様子をむしろもったいないと諭されるほどだと言うのです。
Telepathyはニューヨークやサンフランシスコで「リアルなソーシャルネットワーク」をコンセプトにコ・ワーキングスペースを展開するWeWorkと組んで、Telepathyを体験したり、開発者とコミュニケーションを取るラボの取り組みを発表し、単なる米国進出ではなく、人のつながりを生かしたスモールネットワーキングを基盤にしようとしていますが、こうしたつながりを作る時にも、日本のクールさは役立っていると言います。
日本の良さに関する視点は、冒頭でご紹介したコーヒーの本に通じるものがあります。
サンフランシスコで勃興するクールな最新のコーヒーカルチャーのなかで、コーヒー豆1粒ずつ、ドリップ1杯ずつをていねいに淹れるサービスは日本の喫茶店からの学びが生かされています。またサードウェーブ・コーヒーカルチャーを支える道具は、使いやすさと美しさから日本製がもてはやされているのです。
技術、デザイン、そしてアイディアと精神性。次のデジタルメディアやコミュニケーションに、こうした「日本性」が入り込む余地は、とても大きいのではないかと、考えています。Telepathy Oneが、こうした日本性とシリコンバレーの架け橋となることに、期待を寄せることができる体験でした。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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