ゴールデンウィークからの1週間、1冊の電子書籍を作っていました。普段文章を書いているITの内容ではなく、趣味のコーヒーについて。サンフランシスコを含む米国西海岸沿いは「サードウェーブ」と呼ばれる新しいコーヒーカルチャーが発達しており、日本でも雑誌などでも注目を集め始めました。これについて1年間体験してきたことをまとめた1冊となります。
本の中身とその編集過程に関して、詳しい話は次回の原稿で触れる予定ですが、本を1冊仕上げるための労力というのは大変なもので1週間缶詰になってしまいましたが、無事に出版することができました。最新コーヒーカルチャーに至るまでの歴史や、サンフランシスコを訪れた際のカフェ巡りに役立ちますので、ご興味ある方はぜひ(http://l.ta6.me/thirdwavebook)。
そんな缶詰になる直前の日曜日、シリコンバレーのお家のディナーに招待を受けまして、そこで1つの未来を体験してきましたのでご紹介しましょう。
ウワサのメガネ型デバイス「Telepathy One」をかけてみた
かつてケータイによる独自の発展を遂げた日本は、カラパゴス化と揶揄されるとともに、スマートフォン化の時代に一歩乗り遅れました。しかし、やっと最近アプリ面でもキャッチアップし、そのセンスを発揮し始めています。AppleやSamsungなどの海外勢に押されているデバイス面でも、フィーチャーフォンの時代から機能やデザイン、電池の効率、ユーザビリティーのアイディアなどは非常に先進的でした。
こうしたハードの光る技術でもう一度世界を狙おうとしているのがTelepathy Oneです。チームを率いるのは、ARアプリ「セカイカメラ」でおなじみの井口尊仁氏。井口氏の新しい会社であるTelepathyが、ウェアラブルデバイスを世の中に送り出すべく、立ち上がりました。
Telepathy Oneをかけて、右目の前にフレームを合わせると、映像が見えてきました。始めは少し位置合わせにコツが必要でしたが、一度見方が分かると、「自然に視界の中にディスプレイが浮かんでいる状態」として定着してきます。
デモではTelepathy One用のAndroidアプリ、「漫画カメラ for Telepathy」を用いた拡張現実の体験を楽しむ事ができました。Androidデバイスのカメラの映像をリアルタイムで受信して漫画のようなエフェクトを通して目の前のディスプレー、もとい、目に直接映し出しており、ハンズフリー、ディスプレイフリーで程よく現実世界とARが混ざった「視界」が作り出されていました。
またスマートフォンのカメラは自在に他の方向を向けることができ、自分が向いていない視点の映像を、自分の目の前の映像に重ねて見る体験を楽しむこともできます。このときは自分でカメラを上下左右に動かしていましたが、まったく別の人の映像がここに入ってくることを想像すると、その情報量やコミュニケーション、あるいは時間軸が多重化されるようになるのだろう、とぼんやり考えながら過ごした時間は心地よいものでした。
視界の一部に画面があり、別のリアルタイム映像が映し出されているという状況自体が初めてでしたが、慣れと用途次第で「当たり前の風景」として定着する可能性を十分に感じることができます。
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