スマホの主戦場は今では50~150ドル
ここでもNokiaはAndroidに推されている
Nokiaの「Asha 501」およびAsha強化の背景には、この分野での攻防戦が激化してきたことがある。
ニューデリーでの発表にはCEOのStephen Elop氏も登場している。NokiaにとってAshaがターゲットとするインド、中国をはじめとした新興国市場は重要だ。iPhoneと新しいスマートフォンブームが到来する前にNokiaが世界で大きなシェアを維持してきたのは、ホームである欧州に加えて、そしてこれらの新興国市場で大きなブランドを確立し、シェアを保ってきたためだ。 今やハイエンドでは、完全にAppleやSamsungの後塵を拝しているが、Nokiaはこれらの市場でも危機にある。中国やインドの地元メーカーが安価なAndroidスマートフォンを作っており、Samsungも今年始めに発表した新ブランド「Rex」で攻勢をかける。
たとえばインドのMicromax Informaticsの「Micromax X89 Ninja」はAndroidをベースに1GHz動作のデュアルコアプロセッサや3メガピクセルカメラなどの特徴を持ち、6000ルピー(約1万1000円)という価格を実現している。中国でもZTE、Huawei Technologies、Lenovoなどの世界的に知れたブランドのほか、Coolpadなどのメーカーも力を付けている。そして、そのほとんどがAndroidで成功しているのだ。
余談だが、SamsungとNokiaの違いとして、「Rex」でSamsungはハイエンドのAndroidブランド「GALAXY」に似せたデザインの端末を用意しているが、Nokiaの場合は「Lumia」と「Asha」の外観がかなり異なる。この差異に消費者がどのように反応するのかは興味深いところだ。
Counterpointは今後のスマートフォン市場は50~150ドルの価格帯が主戦場になるとして、Nokiaはここでもシェアを落とすことになると予想している。実際、7割付近のシェアを謳歌してきたインド市場で、Nokiaは数年前からシェアを大幅に落とし現在は20%台を推移している。
このようなこともあり、Nokiaのスマートフォン戦略について、再び懐疑論が出ている。Windows Phone戦略に転向して2年目、そろそろ株主も寛容できなくなってきたということのようだ。だがAshaを発表する直前に開かれた株主総会で、CEOのElop氏はWindows Phone戦略を固守することを明らかにした。Nokiaは今週にも、最新のLumiaを発表することになっている。より大きな視点でみるなら、NokiaがAndroidに転向したとして、本当に復活できるかだろう。
注目はApple、廉価版のiPhoneが本当に登場する?
Androidではたとえば、仏Archosが4月に「Archos 35 Carbon」など3機種を発表、スマホ分野に参入した。Archosといえば安価なAndroidタブレットで知られるが、スマホも価格帯は低めの設定で、99ドルからとなっている。Windows Phoneでは先述の通り、Nokiaが2月に139ユーロの「Lumia 520」を発表している。既存のOSだけではない。Firefox OS、Tizenなど、今年後半に登場が見込まれる新OS組もこの市場から入ることが予想されている。
注目されるのは、やはりAppleの動きだ。廉価版iPhoneの憶測が昨年から出ては消えてのくりかえしである。1月にAppleのマーケティングトップ、Philip Schiller氏が「Appleの方向性ではない」と否定、一度は煙が消えたかに見えた。
しかしここにきて噂が再浮上している。Wall Street Journalが今年後半に安価版iPhoneが登場するらしいと報じれば、Reutersは同社のサプライヤーである台湾Pegatronが中国で4割増となる4万人を増員すると報じた。PegatronはiPhoneとiPadの製造を担当している。
スマホでのシェア争いを重視するならiPhoneの廉価版は間違いなく必要だろう。だがそのようなシェアを求める製品が、同社のブランド戦略にフィットするかどうかは分からない。
筆者紹介──末岡洋子

フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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