Silvermontの特徴は
最大3倍の性能と5倍の省電力性
ここからは消費電力の話だ。今回Silvermontで搭載されたのは、22nmといってもIvy BridgeやHaswellに利用されている「P1270」ではなく、SoC向けの「P1271」となる。
まだ「P1271」の詳細は公開されていないのだが、32nm世代のSoC向けである「P1269」は連載173回で紹介した。この「P1269」を22nmに移行させたのが「P1271」と考えられる。
ちなみに上の画像には“Multiple 22nm process version”とあるが、P1270とP1271の他に、少なくともP1271.9というプロセスがあることは判明している。これはTabulaというFPGAのメーカーがインテルに製造委託する際に利用しているプロセスであり、他にもいくつかあると思われる。
そして、上の画像におけるイラストの2段目を拡大したのが下図だ。
整数が3命令(ALU×2+AGU)、浮動小数点が2命令のOut-of-orderのパイプライン図であるが、果たしてこれが本物かどうかは現時点では判断しがたい。過去のインテルの例だとまるっきりフェイクの可能性もあるのだが、規模としてはこの位のものになるだろう、という目安にはなるのかもしれない。実際の設計だとすると、ALUに比ベて明らかにAGUが不足して見えるからであるが、このあたりはもう少し情報公開されないと判断しかねる部分だ。
さて、そのAtomの省電力機構であるが、Core iシリーズ並みにTurbo Boostの制御を細かく行なうように改善したとしている。
Core iシリーズ同様に、温度と消費電力、それと供給電力のバランスを取りながら動的に動作周波数の配分を変えるハードウェアが搭載された、としている。また、先に述べた通り特にSoCでは単にCPUコアだけでなく、システム全体の省電力性を高めることが必要である。このため、コア単位ではC0・C1/C2・C6といったステートで省電力性を管理するが、システム全体ではさらに細かな動作モードをサポートしていることが示された。
さて、このあたりから省電力に加えて性能の話である。Silvermontの特徴で「幅広い動作周波数レンジでの動作をカバー」と書いたが、その意味を示すのが下の画像のプレゼンテーションである。
要するに「競合するコア」と比較して、ずっと良い「性能/消費電力比」を実現すると説明しているわけだが、これはつまりコアの動作周波数をかなり下げられることを意味している。
たとえばBonnellベースのAtomは、動作周波数が最大2.13GHzまで達していたが、最低周波数は600MHzだった。これは「これ以上下げられない」という意味でもあり、結果「もっと性能が低くても良いから消費電力をさらに下げたい」という要望には応えられなかった。
ところが、実際のスマートフォンの利用状況では、「待機中だと600MHzでも性能が余るから、もっと動作周波数を下げて、その分消費電力を減らしたい」というニーズがある。なにしろバッテリー容量が小さいから、こうした要求は高かったのだろう。それもあってか、Silvermontでは更に最低動作周波数を下げられるようになっているようだ。
ここからは性能について説明しよう。32nmプロセスのSaltwell(STW)とSilvermont(SLM)の性能を比較した結果を見ると、シングルスレッドとマルチスレッドのどちらでも非常に性能が良いことが示されている。
次は競合製品との比較で、ARMベースのデュアルコアおよびクワッドコア製品と比較して、同等の性能をより低い消費電力で実現できるとしている。
もっともARMベースのモバイル向け製品は山ほどあるわけで、「何と比較したか」も重要であるが、それに対する1つの回答が下の画像である。
比較に用いているのがSPECint rate_base2000という計算処理性能向けベンチマークなあたり、実機ではまた色々ありそうに思うが、とりあえずARMベース製品と比較して優位である、ということが示された。
もっとも「どの世代のARMコアをどのプロセスで製造したものと比較するか」でこのあたりの数字は激しく変わるので、現実問題としてこれで「ARMよりも優秀」と言えるかどうかといえば、「何ともいえない」ではあるのだが、インテルがARM陣営を打ち破るために並々ならぬ努力をSilvermontにつぎ込んだ、ということだけははっきりわかる内容であった。
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