22nmプロセスに微細化
内部アーキテクチャーも一新
製品の位置付けの話はこのくらいにして、ロードマップの話をしよう。Silvermontは、Atomシリーズとしては久しぶりのリフレッシュになっている。
もともとAtomの場合、Tick-Tock戦略にうまくはまらなかったため、45nmのBonnellが2008年に登場してから昨年32nmのSaltwellが投入されるまで4年以上も経過することになってしまった。ただBonnellとSaltwellはプロセスはともかく内部構造は完全に同一で、その意味ではここがTickにあたる。
今回はプロセスに加えて内部アーキテクチャーも一新しているので、TickとTockの両方ということになる。ただこれまで言われてきたTick-Tockは基本的にはPentium M以降のパイプラインを少しづつ改変しているレベルであり、マイクロアーキテクチャーを全部入れ替えたSilvermontの場合、例えるならNetBurstマイクロアーキテクチャーからCoreマイクロアーキテクチャーへの切り替えに近いレベルなので、Tockのレベルと言って良いかどうかは微妙だ。
これに続いて、14nm世代ではAirmontが用意され、その後にもう一世代14nm製品が続くことが今回明らかにされたわけで、ここからはTick-Tockが復活するかもしれない。少なくともSilvermont→AirmontはTick、つまり内部構造は小変更に留め、プロセスの微細化を行なったものになりそうだ。そのSilvermontの主要な特徴が下の画像だ。
繰り返しになるが、Out-of-Orderの実行ユニットと、Westmere(SandyBridgeの1つ前のCore iシリーズ)相当の命令拡張、それと新しいセキュリティ/仮想化技術を搭載し、22nm SoCプロセスで製造され、幅広い動作周波数レンジでの動作をカバーするとしている。
まずマイクロアーキテクチャーは、Macro FusionをサポートするOut-of-Orderであることが示されており、最低でも2命令同時実行がサポートされていると思われる。また分岐予測の改善やパイプラインリカバー(パイプラインハザードから高速に復帰する)などとあるため、パイプライン段数は結構少なめかもしれない。
さらに、実行パイプラインのみならずメモリーアクセスに関してもOut-of-Orderが実装されることが示された。ただこのメモリーアクセスのOut-of-Order化は、CPUコア側というよりはシステムエージェント側の機能のようだ。
下の画像は、そぼシステムエージェントとの構成である。
これには、以下のような特徴が示されている。
- CPUは2コア+2次共有キャッシュ(最大1MB)で1つのモジュールを構成する
- 各々のモジュールは、IDIと呼ばれる独立バスでシステムエージェントモジュールと接続される。このIDIはリード(システムエージェント→コア)とライト(コア→システムエージェント)が分離されたバスとなる
- システムエージェントはファブリックで構成され、リード/ライトの要求をOut-of-Orderで実行できる
- 動作周波数及び電源は(モジュール単位ではなく)コア単位で管理される
これを使うと、システムがどんな具合に構成されるかを推定したのが下図である。
これはスマートフォン向けの例だが、2ないし4コアのCPUに加えて、GPUやさまざまな周辺I/Oとメモリーコントローラーが、全部システムエージェントにつながる形となると思われる。このシステムエージェント自体はあくまでIDIでのみ管理を行なっており、GPUコアや周辺回路はブリッジを経由する形で、AXI/OCPやIOSFで接続される様になるのではないかと想像する。なお、AXI/OCP/IOSFについては連載173回を参照してもらいたい。
コアに話を戻すと、拡張命令に関しては下の画像のようになっている。要するにSandy Bridgeで導入されたAVX命令こそ搭載されていないが、それ以前のWestmere世代までに搭載された拡張命令系はすべてサポートする。このあたり、いち早くAVX命令を導入したAMDのJaguarコアとの対比が面白いところだ。
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