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BAは4基、低域ガツンでローパスフィルターの威力も絶大

SHURE SE846は音質調整も楽しめる新最上位イヤフォン (1/2)

2013年05月10日 00時18分更新

文● 小林 久/ASCII.jp編集部

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SHURE SE846

低域に2つのユニットを採用した3ウェイタイプ

 シュア・ジャパン・リミテッドは5月9日、インイヤー型ヘッドフォンの最上位機種「SE846」を発表した。価格はオープンプライスで、7月下旬の発売予定。店頭での販売価格は12万円前後になる見込み。

 ハウジング内には、低域用に2基、中高域用にそれぞれ1基ずつ、バランスト・アーマチュア(BA)型ユニットを内蔵(3ウェイ4ユニット構成)。BAユニットはいずれも新開発で、開発に当たっては、低域用ドライバーはダイヤフラムが最も大きく動くように、中域は感度を高く、高域はレスポンスの速さを追求する形で設計したという。

 SE846はBA型のもつナチュラルで繊細な音の表現に加え、これまでにない実在感のある再生にこだわった意欲作と言えそうだ。

良質な再生を支えるローパスフィルターの存在

 音質面でのこだわりとしては、ローパスフィルターの採用が挙げられる。

 ユニット数を増やせば広帯域を実現できるが、それぞれのユニットが担当する周波数帯域がかぶると、音のにごりなどの原因になる場合がある。据え置きのスピーカーなどでは、ネットワーク回路などを利用し、担当する周波数帯域を分けているが、小型のイヤフォンでは複雑なものを利用するのは難しい。

 SE846ではこの問題に対処するため、電気的な処理ではなく、形状の異なるスリッドを持つ小型ステンレス製プレート10枚を組み合わせ音の誘導路を作ったローパスフィルターを利用している。これを経由することで中高域の成分が減衰し、低域を担当する2つのユニットから発生した音のうち、90Hzよりも高い音をほぼカットできるという。各プレートはレーザー溶接されていて、誘導路を合計すると4.5インチ(=11cm以上)にもなるとのこと。

配布された資料から。SE846の構成部品と、ローパスフィルターの構造

左から順に「エレクトロニカルドメイン」(低域ユニットの音圧を調整する抵抗や各ユニットが担当する帯域を調整するコンデンサーなど電機的な領域)、「メカニカルドメイン」(振動部分など物理的な動きを担当する緑色の領域)、「アコースティックドメイン」(フィルターやダンパーなど音響的な調整をする水色の領域)。フラットな出音をアコースティックな領域で調整して好ましい音質を作っていくのがシュア流だ

 一方、中高域を担当するユニットから出た音はローパスフィルターを経由せず、低域とは分離した穴を伝ってノズルに導かれる。中域の穴には40μm程度の微細な穴を設けており、高域成分をカットしている。ノズル部分はステンレス製の筒になっており、ここにはノズルインサートと呼ばれる交換可能のフィルターが挿入されている。

 ノズルは使用していく中で詰まりやすい部分なので、フィルターを交換できる点はメンテナンス性という意味でも有益。同時に音のレゾナンス(実在感)に関係する部分でもある1K~8Kの音圧を調整する役割も持たせている。

会場では交換方法も実演された左はイヤパッドを外した状態。ボックスドライバーのような専用工具でネジ式のカラーを外せる

右奥のステンレスノズルに入れるフィルター(ノゾルインサート)は標準で3種類付属。色で簡単に見分けられる。付属の専用工具で、手前右の固定用のナット(ネジ式ステンレスカラー)を外すことで、ユーザー自身が簡単に交換できる

 標準添付する「バランス」(標準)、「ブライト」(高域の音圧を向上)「ウォーム」(高域の音圧を減衰)という3種類のノズルインサートを差し替えることで、中高域(1k~8kHz)の周波数帯域の音圧を±約2.5dBの範囲でカスタマイズできる。趣向や聴覚的な特性もユーザーごとに異なるため、その調整をユーザー自身ができる形もSE864のメリットだ。

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