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まかふぃーぶはじめました 第22回

電脳系物理排除型魔法少女「マカルージュ!」

第4話:ボットネットは変態ゾンビの夢を見るか?

2013年05月28日 09時00分更新

文● 藤春都 イラスト●もち夫

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【遺憾ながら】マカフィー・ブルー登場!【俺たちの敵】

ボットネットが目的じゃなかったのかよ!

「へ、変態だ……」

「僕たちが言えた義理じゃないけどね!」

『おまわりさん、この人です』

 マリアの様子をまたもや伺っていた一同は、その長台詞に呻いた。

「へ、変態だ……」

「僕たちが言えた義理じゃないけどね! でもまさか、苛つかせるためだけにマルウェアを仕込んだだなんて思わなかったよ」

「うむ、いかな私もあのような嗜好は理解しがたい。よってこの作戦も見過ごすわけにはいかん」

 苦々しい顔で決断し、イチトは悩める女子高生たちに近づいて話しかけた。

「やあ、君たち。困っているみたいだけど、どうしたの?」

「うわあ、お兄さん、携帯詳しいんですか!? 最近この子の調子が悪いんですけど、買い換えたほうがいいのかどうしようかなって」

「お、セキュリティソフトのことを教えてあげるの?」

 そうすれば女子高生を助けてやることができる。

 だがイチトは蓮の言葉に頭を振り、そっと女子高生の手を取った。

「いや、使いづらいからといって捨ててしまうのは勿体ない。その子はまだ君と一緒に居たがっているはずだよ? そうだな、まずは再起動から……」

「ちょっとリーダー!?」

 わずか数行でいきなり態度を翻したイチトに他三名は慌てた顔をする。

「見よ、女子高生のうるうるした上目遣い、これはいいものだ……ならば『スマホをゾンビ化作戦』、これもまた良しッ!」

 イチトがくわっと目を見開いて叫んだところで、凛とした声が店内に響いた。

「マカフィー・セキュリティ・パワー・メイクアップ!」

 その聞き覚えのある台詞に四人は顔を見合わせる。

「まさか、またマカキュア!?」

「なぜだ、我々はアジトを引っ越したしそもそもここはアジトじゃ」

 ぴろぴろと音楽が鳴り出し、涼しげな青や水色のリボンが少女の光り輝く身体を包み込んでいく。今回こそはと期待してみたが、やはり肌色は光の加減で見えなかった。

 やがて現れたのは、青くすっきりとしたデザインの衣装に身を包んだ、いかにも優等生といった印象の黒髪ロングの少女だった。お約束の眼鏡はかけておらず、黒髪を一房だけ束ねたリボンがアクセントだ。

 唐突に始まった日曜特撮のような光景に、その場にいた客や店員、女子高生たちもいっせいに店内から逃げ出したが、四人はおろか少女もあまり気にしていないようだ。

マカフィー・ブルー。略してマカブ。はてブとは無関係

「マカフィー・ブルー、降臨! 悔い改めよ、悪しき者ども!」

 荘厳な音楽とともに、少女ことマカフィー・ブルー(以下ブルー)は宣言した。

「マカフィー・ブルー……誰?」

 現れた新たな魔法少女に、一同はまたもや困惑した。

「まさか魔法少女界も第二回にしてテコ入れされるほど過酷だとは……」

「そんなわけないでしょう。光はふたつ集まればますます輝くけれど、闇はいくら増えたところでしょせん闇、有象無象でしかないあなたたちとは違うのよ」

 言ってブルーはふわっと髪をかき上げてみせた。

「く、くそう、魔法少女め、主役だと思って……」

「無垢なる少女たちの端末にマルウェアを送り込んでゾンビ化し、ボットネットを通じて闇の勢力の拡大を図り、子羊たちの心を惑わせるなんて言語道断。まったくストレスはお肌に悪いっていうのに」

「ちょっと待て、マルウェアを仕込んだのはあのマリア……」

 イチトは慌てて店内を見回したが、そこには既にマリアの姿はなかった。

「その罪、神の名においてこの私が裁いてみせる。告訴は地獄ですることね!」

「三審制は認めてくれるのだな神様!?」

 そしてブルーはがちゃがちゃと物騒な音とともに武器を抜いた。

「銃をNGにしてくれた“諸事情”とやらに、乾杯……!」

 銃身にナイフが取り付けられた銃剣だ。ブルーは危なげない手つきで二本の刃を身体の前でじゃきんと交差させた。

「──聖公会祈祷書より。土は土に、灰は灰に、塵は塵にッ!!」

「ちょっと待て銃剣持ってその台詞はまず……」

 銃剣を構えて突っ込んできたブルーと切り結びながらイチトが悲鳴を上げる。

「しかも、こいつも『レベルを上げて物理で殴る』系じゃん! 全国の魔法少女ファンに謝れ!」

「いや、これでもまだマシなほうなのだ。初稿では我々はどてっ腹に穴を空けられていたらしいが、諸事情で没になったそうだからな」

「そ、そうだったんだ……」

 呆れるやらほっとするやらといった顔の一同を、ブルーはぎろりと睨み付けた。

「ふっ、信仰とは武器の多さではなくただ神を信じる心なのよ。この程度で神罰から逃れられると思わないことね!

 ──コリントの信徒への手紙より。神の国とは言葉ではなく、力である!」

 苛烈な攻撃に蓮やジルベールたちがばたばたと倒れ伏していく。

「だいたい銃は精密機械なのだぞ、ナイフ付けたまま打撃武器にしていいのか!?」

「正しき行いのためならば多少乱暴に扱っても壊れないのよ! そもそも銃モードは諸事情で使えないし!」

「そんな、我々はHDDを落としただけでデータが再起不能になるのに……がくっ」

 ──そして、今回もまた街の平和は守られた。

エピローグ

「ふっ、マリアがやられたか。しょせん新顔に過酷な任務をこなすことなど……」

「リーダー、自分で言って自分で落ち込まないでください」

「やられたのは結局僕たちだけだったじゃん! ねえリーダー、次こそ僕に行かせてよね! というかあのオカマがアジトに来たら殴って良いよね!?」

「う、うむ。楽しみにしているぞ、蓮」

『セキュリティを我が手に!』

<第5話へ続く>

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