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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情第200回

新設計Atom「Bay Trail」のタブレット向け戦略とは?

2013年04月29日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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 前回に引き続き、IDF Beijing 2013で発表された内容から、インテル製品に関するアップデートをお届けする。その前にまず前回の補足をしておこう。

Haswellに搭載されるeDRAMは
4次キャッシュの役割を担うか?

 HaswellのGPU機能「GT3」は、eDRAMをマルチチップモジュール構造で搭載すると連載199回で説明した。

IDFで示されたHaswellの構成図

 上の画像に“Haswell introduces configurations with large graphics & large cache”(Haswellでは、グラフィックス用フレームバッファと大容量キャッシュに使える構成を導入する)とあるように、このeDRAMはキャッシュとして使うことが可能になっている。

 ただし、これがどの程度のキャッシュとして使えるかは明らかにされていない。もともとIvyBridge世代やHaswellに搭載されているLLC(Last Level Cache=3次キャッシュ)は、理論上コアと同速度で動作し、構成的には高速なSRAMを利用している。さらに、Ring Busに直接接続される形になっているため、レイテンシもそれほど大きくない。

いくつか省略されている部分を筆者の推定で追加したHaswellの構成図

 対してeDRAMの場合、上の図にあるようにRing BusからGraphics/eDRAM I/F経由での接続となり、原理的にDRAMはSRAMよりアクセスタイムがかなり遅くなる。したがって、LLCと比較するとレイテンシが大きく、速度が遅いキャッシュとして動作することになる。

 それでも十分に大容量であれば効果はあるのだが、eDRAMはGPUのフレームバッファやキャッシュとしても動作するため、どの程度の容量をCPUコアの4次キャッシュとして使えるのか判断しにくい。

 加えて、このeDRAMを搭載するGT3はモバイル向けのみに提供され、デスクトップ向けには今のところ提供予定がない。ということは、モバイル向け製品で、さらにビデオカードを搭載するような構成でないと、このeDRAMを4次キャッシュとしてフルに活用できるような状況にはならない。

 しかし、こうした状況は非常に希だ。ハイエンド向けノートPCで、しかもBTOオプションでビデオカードが選択できるようなケースでないと、eDRAMを4次キャッシュとして活用するシーンはあまりないと考えたほうが無難である。

Bay Trailはシステムオンチップ構成に変更
スマホ向けのMerrifieldも投入

 次はBay Trailについて説明しよう。まだチラ見せのレベルで詳細は明らかにされないながら、2013年のクリスマス商戦向けにBay Trailを投入することが明らかになった。

IDFで示されたBay Trailの情報は、これでほぼすべてだ(基調講演でのスライドより抜粋)

 これまでの情報でわかることは以下の通りだ。

  • Bay Trail世代は、CPUとPCHをマルチチップモジュール構成で乗せたものではなく、PCHを含む全体を1つのダイとしたシステムオンチップ構成とする可能性が非常に高い
  • 事前情報の通り、Atomはこの世代で完全に新しいマイクロアーキテクチャーになる
  • 最大4コアを搭載
  • ファンレスで、システム全体が3W以下(現実には2W以下)の可能性が高い
  • モバイル向けの「Bay Trail-M」以外に、デスクトップ向けの「Bay Trail-D」が用意される

 このBay Trailはコード名が“Trail”で終わることから、Clover Trailの後継であり、タブレットなどがターゲットの製品である。

 そしてClover Trailの世代の場合、基本として同じ構成であるが若干仕様などを変更したスマートフォン向けのMedfieldがあるわけだが、同じようにこのBay Trailをベースにスマートフォン向けとしたMerrifieldを投入することも明らかにされた。

スマートフォン向けの戦略。現在Medfieldだけでは足りず、ハイエンドにタブレット向けのClover Trailをそのまま採用したClover Trail+も投入されている。Merrifieldはこの後継となる

 タブレット向けとスマートフォン向けを区別するということは、スペックに違いがありそうだが、実のところ“基本は変わらない”のである。ARMベースのシステムオンチップをみても、QualcommのSnapdragonシリーズやNVIDIAのTegra、SamsungのExynosといったプロセッサーは、同じものがタブレットとスマートフォンの両方に利用されている。

 ハードウェアとしては、多少液晶のサイズが大きいことと、バッテリー容量が大きいこと以外に目立つ差はなく、これはコアの動作周波数の違い程度でカバーできるため、ARMベースのシステムオンチップではわざわざタブレット向けとスマートフォン向けに製品を作り変えたりはしない。

 同じことはインテルにも言えるわけで、22nm世代でも相変わらずタブレット向けとスマートフォン向けにプラットフォームがリリースされることになった。そこで、タブレット向けのBay Trail搭載製品は2013年のクリスマスシーズン、スマートフォン向けのMerrifield搭載製品は2014年の第1四半期に市場に出てくるという話が述べられている。

 いわゆるタブレットの場合、WWAN(3G/3.5G/LTE)を搭載しないWi-Fiのみの製品だと検証も簡単なので比較的短期間で製品が投入できる。ところが、スマートフォンは携帯電話なので、通話できるかをしっかりと確認し、通信キャリアの認証を取得する作業が余分に必要である。これがどの程度かかるかはキャリアや地域でもだいぶ差があるが、短い地域でも1四半期程度は普通にかかってしまう。

 したがって、おそらくBay TrailとMerrifieldは、ほぼ同時期にOEMに対して出荷開始されるが、キャリア認証が余分に必要な分、市場への製品投入はやや後送りになるであろう。

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