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イスラエル生まれの無料英文チェッカー

間違い英語を無料で直せる、すごい技術

2013年04月25日 07時01分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/アスキークラウド編集部

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ジンジャー(Ginger)はイスラエル生まれ、無料の英文チェッカープログラムだ。Gmailの英文メールも校正してくれる。月間アクティブユーザーは100万人、Androidアプリのダウンロード数は200万を超えている

ヤエル・カロブCEO

 ヤエル・カロブは、イスラエルのITベンチャー、ジンジャー社の女性CEOだ。ワイツマン科学研究所で数学とコンピューターサイエンスの理学修士を取得しており、統計学・自然言語処理の専門家でもある。

 彼女は極めて頭がよく、完璧主義だった。そして、英語が母国語ではないとはいえ、自分の英語が完璧ではないことがとても嫌だった。

 「自分が間違った英語を使うなんて! ありえない!!」

  完璧を求めた彼女は自分の書いた英文をフレーズに分けた。そして1つ1つをグーグルで検索。その結果を見て、最もよく使われているフレーズを選ぶことにした。それが「統計的に正しい」英語だったからだ。グーグルの検索結果を見つめながら、彼女は思った。

 「そうよ、これを自動的にやってくれるサービスがあったらいいのよ!」


ネット上にある何百億ものフレーズを分析
間違った英語表現をリアルタイム校正

 2007年、そんな思いから作られたのがNLU(自然言語処理)エンジンだ。ネット上にある何百億ものフレーズを分析し、正しい英語表現を抽出する。カロブは初めこれを難読症の人々向けに提供していたが、2011年に看板商品「ジンジャー」(Ginger)として世に出した。

 ジンジャーはNLUエンジンを使った英文チェッカーサービスだ。入力された英文の文法や文脈をエンジンが分析し、自然な英語表現かどうかをチェックしてくれる。日本からでも使え、しかも無料だ(ただし、この機能を使った英語学習サービスは有料)。

 ジンジャー社はこのチェッカーサービスを投資会社に売り込み、2100万ドルもの資金を手に入れた。現在、アクティブユーザーは月間100万人。チェッカーサービスをもとにした英語学習サービスを有料で売り出しているが、まだ売上高や粗利、成長率を気にすることなく、のびのびとユーザーを増やしている。

 企業としての狙いはもちろん英語市場。市場規模は世界で約608億ドル、日本に限定しても7000億円と言われている。特に日本のeラーニング市場は期待の成長株だ。

 まずは個人向けに商品を展開。いずれ企業、学校・教育機関向けのサービスも開発していくつもりだという。現在チェックできるのは英語だけだが、技術的に「言語の壁はありません」と語るジンジャー社。中国語チェッカー、日本語チェッカーを開発する可能性もある。まずは英語市場を抑えてから、その次の展開を考えていくのだろう。

 ところで、実はイスラエルと日本はよく似ている。英語が母国語ではなく、比較的マイナーな言語(ヘブライ語/アラビア語)が公用語であること。メッセンジャーサービスの元祖ICQなど、技術系の企業が多いこと。医療関係の特許件数では、日本と1位、2位を争っている。

 「間違った英語は恥ずかしい」という共通の悩みを抱える日本とイスラエル。注目のスタートアップであるジンジャーは、日本でも案外あっさり受け入れられるかもしれない。

ジンジャー(Ginger)の公式解説ビデオ。とてもかわいい。

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