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iPad miniなど利益率が低い製品の売上比率増える

アップル13年1〜3月期決算、過去10年で初の純利益減少

2013年04月24日 09時30分更新

文● 鈴木淳也(Junya Suzuki)

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今年はApple戦略の転換点に到達か

 表題にもあるように、今回の決算は今後のAppleならびにモバイル業界のトレンドを象徴するものになったと考える。まず売上が11%と順調に伸びているにもかかわらず、純利益が18%と大幅減になった点だ。

 先に挙げたiPhone、iPad、Macの販売台数推移から分かるように、Macで微減がみられるものの、iPhoneでは微増、iPadにいたってはほぼ倍増に近い水準になっている。それにもかかわらず、売上がそれほど伸びておらず、一方で純利益が大幅に減少している。考えられる原因は明らかで、製品単価ならびに利益率が前年に比べて大幅に下がったことによる。

 iPhone 5の利益率が従来モデルに比べて低い点は多くのアナリストらが指摘しているが、それ以上に今回の決算に大きな影響を及ぼしたとみられるのがiPadの存在だ。前年比の販売台数が大きく変化しているのはiPadだけであり、おそらくは製品単価が3分の2程度で、利益率も低いとみられるiPad miniの販売比率がiPad全体の販売台数に対して増えたことが原因と予想される。実際の販売台数が不明なため断言はできないが、低価格で低利益率の製品が増えることのインパクトを如実に示していると考える。

もし、利益率の低い廉価版iPhoneが登場すると?

 「もし、廉価版iPhoneが登場するとどうなるのか?」というのが、今後の大きなポイントとなるだろう。廉価版というように従来のiPhoneに比べて低価格であり、おそらくは利益率も大幅に低くなる。これが実際に販売開始された場合の結果を、今回のiPadは示しているといえる。

 次に、Appleが販売するとみられる「iPhone 5S(仮称)」は現行iPhone 5のマイナーチェンジ版になると予想されるが、ユーザーの支持をそれほど得られなかった場合、廉価版iPhoneにシェアを侵食される可能性がある。売上は増加しても、純利益は悪化する結果となるだろう。

 もっとも、廉価版iPhoneが登場した場合、高価格帯の最新iPhoneの人気があまり高くない欧州やアジア地域では新規ユーザーを獲得する可能性はあるだろう。実際、Cook氏は中国での営業成績の伸びが全地域中最大であったことを再び強調しており、ここで一気に攻勢をかけるための武器になる可能性もある。

 だが、高収益体質が特徴だったAppleにとって、「売れば売るほど収益率が悪化する」というジレンマに陥る可能性がある。「(廉価版を)出さずに失地を良しとするか、あるいは強みを捨ててでも領土を取りに行く」か、難しい判断を試される年となりそうだ。

 Appleは2013年度第3四半期(4〜6月期)の見通しについて、売上は335〜355億ドル(約3兆3303億円〜3兆5291億円)程度を見込んでいる。一方で、EPS(1株あたりの利益)の見通しについてはコメントを差し控えている。Wall Street Journalによれば、Thomson Reutersによるアナリストらの同期の業績予測の集計結果は382億5000万ドル(約3兆8025億円)で、Appleの発表した見通しよりも高い。通常、Appleは業績見通しについて控え目の水準を示すことが多いため、実際の業績がどの程度アナリスト予測に近付くかに注目だろう。


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