予定より大幅に遅れて
ALiMAGiK 1をリリース
ALiの存在感の薄さは、同社のロードマップからも透けて見える。上図は1999年6月のCOMPUTEX/TAIPEIでALiが示したロードマップであるが、1999年6月というのはAMDがK7を発表した時でもある。もうAMDはK6-IIIの500MHz製品を0.25μmでリリースすることを事実上放棄しており、FSBも100MHzが上限で、それ以上引き上げる気配は皆無だった。
WinChipやmP6も100MHz以下のFSBしかサポートしていないのに、133MHz FSBをサポートする「Aladdin-7」を8月にサンプル出荷、10月に量産というのは市場からとてつもなくかけ離れた動きである。もちろんK7向けも色々手がけるという話をしており、同じタイミングでK7向けとしては下図のロードマップが示されている。
ただ一番最初、後に「ALiMAGiK 1」としてリリースされるM1647ですらサンプル出荷が2000年第1四半期、量産は2000年第2四半期だから、早くても2000年のCOMPUTEXあたりまで製品は登場しないことになる。実際はさらに遅れたのだがこれは後述にしよう。M1648というのはM1647コアに3Dグラフィックスを統合した製品なのだが、これは最終的にM1646こと「CyberMAGiK 1」としてリリースされた。
なぜM1648からM1646に型番が戻るのかというと、当初M1648を想定していた時点では、Aladdin-7と同様にArtXのコアを搭載予定だったからだ。ところが2000年にArtXはATIに買収されてしまう。その結果として、ArtXのコアを引き続き使うことは契約上不可能になってしまった。
そこで急遽、TridentのCyberBlade 3Dのコアを搭載したのが「CyberMAGiK 1」である。ゆえに、型番が戻ることになってしまった。このあたりの経緯は、連載156回で説明した通りである。
CyberBrade 3DのコアをALiがどう評価していたかを、2003年に間接的に聞くことができた。この時期だとTridentは既にXGIに買収されていた頃であるが、当時ULiのCEOだったAlex Kuo氏は「現時点ではXGIのグラフィックだが、次世代はATIにする」とはっきり明言していた。
統合グラフィックである以上、性能よりも価格(ダイサイズに占めるグラフィックの回路のサイズ)が重視されるとは言いつつ、もうTridentを使うつもりはないと明言していたのだ。
その理由は性能云々以前に、Tridentのコアを使ったことにより、グラフィック周りの安定度が大幅に悪化、ドライバーの更新を延々と繰り返す羽目になっていたからだ。結果、安定性が売りだった同社の方向性にまるでそぐわない製品になってしまったことが、一番お気に召さなかったらしい。
CyberMAGiK 1がリリースされたのは2001年に入ってからだ。構成的にはAGPポートを持たないモバイル向けであったが、この市場はもともと小さいうえに、主にSiSがこの市場をガッチリ握った後であったため、ほとんど参入の効果はなかった。
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