マザーボードベンダーの採用が遅れ
シェアを握れなかったALiMAGiK 1
そのALiMAGiK 1は、2000年の6月に製品発表がなされている。実はDDR-SDRAMをサポートするK7向けのチップセットは、ALiMAGiK 1が最初であった。このDDR-SDRAMのサポートを武器に、ALiはK7市場に参入しようと目論んだわけだ。
冒頭で8月にALiの記者発表会が日本で行なわれたと述べたが、その際にはIwill製マザー「KA-266R」の試作品も展示されている。ところが、これはあまりうまく行かなかった。理由は2つある。
まず製品投入が2001年までずれ込んだこと。2000年中に搭載マザーボードが大量出荷されていれば、もう少し違った事態になったかもしれない。ALiMAGiK 1を搭載した最初の製品であるKA-266Rは、一応2000年12月末にごく少量流通したものの、十分な数量が出回るようになったのは2001年に入ってからである。
そして2001年1月には、DDR-SDRAMをサポートする第2弾としてAMD-761チップセット搭載マザーボードが流通を始めてしまい、結局ALiMAGiK 1は先行のメリットをほとんど生かすことが出来なかった。
もう1つの理由は、ALiがVIAやSiSほどシェアがなかったため、大手マザーボードベンダーの採用が遅れたことだ。例えばMSIの場合、まずAMD-761搭載の「K7 Master」とVIA KT266搭載の「K7T266 Pro-R」を出荷、その後でALiMAGiK 1搭載の「K7MG Pro」を出荷している。
ほとんどのベンダーがAMDとVIAのチップセット(後にNVIDIAも加わった)を搭載した製品をまず出して、その後でALi/ULiの製品を出すといった扱いになっていた。そのため、ALiMAGiK 1はほとんどシェアを握れなかった。
需要がないと判断され
ALiMAGiK 2は開発中止
それでは、今回の本題であるALiMAGiK 2の話に移ろう。ALiMAGiK 2ことM1667というチップセット、実はALiの資料からは一切出てこない。ではどこから出てきたかというと、最初はASUSTeKのロードマップであった。
これは2002年の第1四半期に出てきたもので、2002年第3四半期をめどに、DDR-333/400 SDRAMとAGP 8X、それに333MHz FSBをサポートする製品として、A7N8X(nVIDIA nForce 2)/A7V8X(VIA KT400)/A7S8X(SiS746)/A7A8X(ALi M1667)の4製品がラインナップされていた。実際にはA7N8X/A7V8Xの2製品はそのまま出荷され、「A7S8X」はMicro ATXで、かつチップセットをSiS741GXにした「A7S8X-MX」がリリースされている。ところが「A7A8X」はそのまま消えてしまった。
いくつかの資料から察すると、このM1667はALiMAGiK 1と、K8用のチップセットであるM1687の中間的な構成になっていたようだ。まずFSBに関しては、400MHzのサポートはなく333MHzまでであるが、この当時はまだAthlon XPは333MHz FSB止まりだったのでこれに合わせたのだろう。AGPは8Xの対応が追加、メモリーコントローラーはDDR-333のサポートが追加されている。
これだけであればALiMAGiK 1の単なる改良に留まるのだが、大きく異なるのがサウスブリッジとの接続だ。PCIベースのM1535系だと機能が限られるので、Pentium 4やK8向けに開発していたM1563を利用するために、接続を8×8のHyperTransport Link(800MHz)を採用することになっていた。
既にHyperTransport Link経由での接続はnVIDIAのnForce 220/420で実装されていたし、ALiもほぼ全面的にHyperTransport Linkを採用予定だったから、これはそれほど不思議ではない。おそらくALiMAGiK 1の完成直後からこの作業に掛かっていたとすれば、タイミング的には2002年第2四半期くらいにリリースするのは難しい話ではないだろう。
ただ最終的にALiはALiMAGiK 2のリリースを中止、チップセットがないのでASUSTeKも「A7A8X」をキャンセルしてしまった。ALi的には、これ以上K7に力を入れても、マーケットシェアをとるのは難しく、それであればK8の市場にかけたほうがマシ、という判断をしたようだ。すでにこの頃Athlon XPは、Pentium 4の猛追もあって次第に価格を下げ始めていた時期だから、将来はそれほどない、と判断したのも無理ないことである。
最終的にALiMAGiK 2は、サンプルの製造すらたどり着かずに終っている。市場の状況を考えれば妥当な判断ではあるが、人知れず消え去ったのがこのALiMAGiK 2であった。この後ALiは、こうしたニックネームを使うのを一切やめ、チップセットは全部M1xxxという型番のみで表記するようになったのも、示唆的である。
この連載の記事
-
第768回
PC
AIアクセラレーター「Gaudi 3」の性能は前世代の2~4倍 インテル CPUロードマップ -
第767回
PC
Lunar LakeはWindows 12の要件である40TOPSを超えるNPU性能 インテル CPUロードマップ -
第766回
デジタル
Instinct MI300のI/OダイはXCDとCCDのどちらにも搭載できる驚きの構造 AMD GPUロードマップ -
第765回
PC
GB200 Grace Blackwell SuperchipのTDPは1200W NVIDIA GPUロードマップ -
第764回
PC
B100は1ダイあたりの性能がH100を下回るがAI性能はH100の5倍 NVIDIA GPUロードマップ -
第763回
PC
FDD/HDDをつなぐため急速に普及したSASI 消え去ったI/F史 -
第762回
PC
測定器やFDDなどどんな機器も接続できたGPIB 消え去ったI/F史 -
第761回
PC
Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ -
第760回
PC
14nmを再構築したIntel 12が2027年に登場すればおもしろいことになりそう インテル CPUロードマップ -
第759回
PC
プリンター接続で業界標準になったセントロニクスI/F 消え去ったI/F史 -
第758回
PC
モデムをつなぐのに必要だったRS-232-CというシリアルI/F 消え去ったI/F史 - この連載の一覧へ