今回の戦略説明会では、具体的な研究成果として、3つのアクションに分類した14種類の技術を発表した。
「人が活動する場でのイノベーション実現」では、指で直観的な操作ができる次世代ユーザーインタフェースにより紙の資料を簡単にデジタル化して保存する技術や、スマートフォンやPCのカメラで脈拍を計測する技術による健康管理の提案を行っていたほか、「ビジネス・社会を情報装備」では、リンクが張られた400億項目におよぶ公開データ(LOD=Linked Open Data)を格納、検索する技術により、LODの利用促進に寄与。さらに、ビッグデータ向けの集計技術により、大量のデータをリアルタイムに分析するといったことを可能にする用途提案を行っていた。
また、「End-to-Endで全体最適化」では、ロスに強い転送方式や、遅延に強い転送方式など、利用条件に応じて最適な高速データ転送方式の自動選択できる技術や、汎用的な10Gbps用の部品で、100Gbpsの高速通信を実現する世界初の光伝送技術などを紹介した。
共通基盤にあたるものとして、水性塗料の活用により、有機溶媒を80%削減したり、リサイクル材をノートPCにも採用することで、CO2排出量を15%削減できるといった環境対応技術も発表した。
PC、ネットワークから人が中心になる情報通信社会を
富士通は、「ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティの実現」を、全社テーマに掲げている。
これは生産性向上を実現した1990年代のコンピュータセントリック、ビジネスプロセス改革を及ぼした2000年代のネットワークセントリックとは異なり、2010年には、人が中心となる「ヒューマンセントリック」がICTの進む道になるということを示している。
「技術中心から人間中心の世界へとICTがパラダイムシフトし、その結果、知の創造行動支援につながる」(富田社長)というわけだ。
富士通の山本正己社長も、「これまでの富士通の事業領域は、企業の生産性向上、コスト削減というところで貢献するものであった。しかし、これからは社会そのものの課題を解決していく役割を担うことになる」と語る。
それがヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティの実現につながることになる。
富田社長は、「我々の暮らしを取り巻く様々な課題は複雑に入り混じっている。そのため、社会の個々の課題を、パッチを当てるようにひとつひとつ解決するのではなく、組み合わさった課題を、システム全体としてとらえて、解決していく必要がある」とする。
そして、「竹のように柔軟で、壊れにくい社会を実現したいと考えており、そのためにICTは不可欠なものになる。富士通研究所は、そうした方向に向けて研究開発を進めている」と語る。
富士通研究所では、「社会の持続可能な成長。その先にある、人が安心して暮らせる豊かな社会の実現を目指していきたい」と、方向性を示す。
企業の生産性向上、個人の生活向上といった点から、「社会」という言葉を、富士通は頻繁に使い始めた。富士通研究所の開発テーマからも、社会問題の解決に大きく舵を切り始めていることを伺い知ることができたといえる。
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