描画以前にドライバーが動かない
お粗末なグラフィック性能
出荷が遅れた原因の1つは、rCADE 3Dの問題だ。rCADE 3Dは連載156回でも触れたが、ベースとなるのは3DImage 9750というコアである。TGUI 9680という64bitの2Dグラフィックコアに3Dエンジン(この名前がrCADE 3D)を追加したもので、一応DirectX 6とOpenGL ICDをサポートすることになっている。
回りくどい言い方をするのは、描画性能以前にドライバーがまともに動かず、これをまともにするためにものすごく時間がかかったためだ。実際、半年遅れで出荷した後も煩雑にドライバーのバージョンアップが繰り返されたが、まともに動かないことに変わりはないという悲惨な状況だった。
おまけに、そこまで苦労しても性能はおそろしく低かった。2Dはともかく、3Dに関してはまず32bitカラーをサポートしておらず、性能はおおむねIntel 740の半分程度といった始末。Intel 740も褒められた性能ではないのだが、これの半分というのは「3Dが動く」だけで、「3Dで使える」ことは意味しない。
1ヵ月後に登場したIntel 810は、Intel 740の後継製品であるIntel 752コアを搭載したこともあり、UMA方式に絡んでメモリーアクセスの遅さに多少足を引っ張られたものの、MVP4の倍を超える描画性能を出しており、もうまったく勝負にならなかった。
VC-SDRAM対応のはずが動かない
メモリーコントローラーにも暗雲
もう1つの問題がメモリー周りのトラブルだ。SiS630の時も、当時のNECのエンジニアが無関係なメモリー周りのデバッグをやる羽目になった話を紹介した。Twitterで「ひどい」という反応があったが、これはSiSだけではなく、実はVIAの方が先だった。
VIAはMVP3からVC-SDRAMをサポートしており、MVP4でもサポートをしている。ところがサポートしているにも関わらず動かないというのが本当のところで、例えばMVP4を搭載したAOpenの「MX59 Pro」(関連リンク)は、対応メモリーにVC-SDRAMが入っていないし、VC-SDRAMを販売していたメルコ(現バッファロー)の製品ページにおける対応表を見ても、MVP4搭載マザーボードは含まれていない。
そもそもVIAのチップセットの場合、メモリーコントローラーは常に何かしらの問題を抱えており、MVP3では(VC-SDRAMの対応を除くと)それが顕在化しなかったらしい。ところがrCADE 3Dコアを内蔵してUMA方式を採用したことにより、問題が顕在化してしまった、という説明をこっそりと関係者から聞いたことがある。
結局この問題は、P6向けチップセットであるApollo Proシリーズでメモリーコントローラーを作り直すことで解決したらしいが、結果MVP4に関しては、旧NECのエンジニアはデバッグに協力したあげくにサポートされないという、踏んだり蹴ったり状況だったそうである。
製品を供給できずシェアを失う
次世代品も低性能かつトラブル続き
この結果として、ハイエンドはP6互換に移るが、バリュー向けにはSuper 7をという互換機メーカーの意向は、対応するチップセットがないという理由で早期につまずき、結局Super 7の寿命を縮めることになってしまった。
またMVP4の開発と並行して、P6向けのApollo Pro 133にもrCADE 3Dコアを入れた「Apollo ProMedia」を開発していたが、あまりの性能の低さとトラブルの多さに早々とこの路線を断念。一応Apollo ProMediaは1999年6月にリリースされたものの、同時期にはS3のSavage 4コアを内蔵したProSavage PM133コアの開発に着手。これが最終的にVIAによるS3 Graphics買収につながっていく。
グラフィック統合チップセットで、メモリコントローラーとグラフィックが駄目なら、そりゃ駄目だろうというのはSiS630などと共通の話であるが、改良型製品が続いたSiS630はともかく、MVP4はSuper 7の幕を閉じてしまったチップセットとして記憶されることになったあたりは、やはり黒歴史向け製品と言えるだろう。
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