M2M通信とクラウドが大きな鍵
ここまで聞けばわかる通り、ポタナビの技術的なポイントは、端末と連携するクラウド、そしてそれを実現する専用端末のM2M通信にある。端末からは走行データを送信しつつ、ポタリングに役立つさまざまなデータはクラウドから収集。「TVで紹介されたスポットのデータや現地の天気情報などを定期的にサーバーから拾ってきます」(宮崎氏)という点は、実にビッグデータらしい使い方だ。
システム面を手がけたソフトウェアチームの岡林弘起氏は、「やはりクラウドにデータを集約し、Webブラウザでどこからでも使える形がふさわしいと思いました。バージョンアップも定期的に行なうので、クラウドで管理することで負担が軽減されます」と語る。そして、このクラウドの構築に採用しているのが、IDCフロンティアのクラウドサービスだ。
IDCフロンティアのクラウドサービスを採用した理由は、安定性と精度の高さ、そしてレスポンスのよさだという。「確かにAWS(Amazon Web Services)を使えば素早くできますが、やはりシステムを作り込むためには事業者とのコミュニケーションが重要です。その点、IDCフロンティアはレスポンスがよく、サービスの精度も高いと思います」(岡林氏)と評価。単にサービスを使うだけではなく、いっしょにシステムを作り込んだパートナーという位置づけだ。
とはいえ、前例のないシステムだけに、構築で苦労した部分もあった。そもそも専用機とクラウドをつなぐという時点で、関係者間の調整が難しかった。「端末を開発している人、データセンターや通信を担当する人、Webサービスを作る人、専門分野がそれぞれ違うので、当初は話が本当にかみあいませんでした」(岡林氏)という。担当者が打ち合わせを繰り返し、異なるレイヤの話を“翻訳”しながらだんだん完成形を描けるようになったとのことだ。
また、M2M通信ではユーザー数に応じたトラフィック量を設計するのが難しく、「ポタナビの電源をオンにしておくと、常時通信します。しかし、安価にサービスを利用しようと考えると、契約しているデータ量を超えないようにしなければならず、その点が難しかったです。そのため、ある程度溜めてから送信するなど、いろいろと工夫しています」(岡林氏)といった作り込みを行なっている。
クラウドをつなげる。ユーザーをつなげる
ポタナビは3G通信を使ったソフトウェアバージョンアップが可能であり、これまでCycle Labと歩調をあわせて進化してきた。3月11日にはソフトウェアのバージョンアップを行ない、ポタナビユーザー同士でグループを組んで、メンバーの位置がわかるという「フレンズポイントモード」を追加した。「マップナビモード」の表示内容や「メーターモード」の表示パーツも追加された。
今後もさまざまな展開を予定しているが、クラウドをベースとしたことで、柔軟性の高いサービスを可能にできるという。岡林氏は、「次は、クラウド同士の接続だと思います。世の中、似たようなサービスがいくつもあるので、それらをつなげれば、サービス性を向上できます」と語っており、今後もユニークなサービスが期待できそうだ。
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