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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第117回

噂の磁性流体が予想以上にスゴかった

日本初公開、ソニーのスピーカーに使われた磁性流体の正体

2013年03月23日 12時00分更新

文● 四本淑三

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フルレンジスピーカー向きの強い磁性流体を開発

―― それでいよいよ磁性流体とは何ぞやという話なんですけど。この技術は今までソニーさんでは使われています?

 弊社でと言うよりは、ツイーターと呼んでいる高域用の小さいスピーカーには従来から使われています。磁性流体自体も1960年代には開発されていますので、特に目新しいものではないです。

―― と言われましても、我々一般人にはすごく目新しい感じがするんですが、これは何なんでしょう?

 まず通常スピーカーというのはですね、まあこういう風になっていまして。

マグネットとフレーム(右)からボイスコイルとコーン(左)を外した通常のスピーカー。筒状のボイスコイルがマグネット側の丸い溝に納まった状態で、ボイスコイルに電流が流れるとコーンが動く。このボイスコイルをスピーカーのフレームで支えるために、フレームと接着されているのが茶色い傘のようなダンパー

右が通常のスピーカー。左は磁性流体を使ったスピーカー。ダンパーがなく、ボイスコイルの根元(写真では上)に薄く磁性流体が付着している。マグネット側の溝にも磁性流体は入っているらしい

 それに対してこれは磁性流体を使っているスピーカーです。

市村 これは海外のメディアには見せているんですが、本邦初公開ですから。

―― ほーっ、磁性流体はここに付いてるんでしょうか?

 あっ、そこは触らないほうがいいです!

―― えっ!

 触ると手が黒くなりますから。いまお見せします。これが磁性流体です。この瓶の中に入っているものが。

丸い磁石に吸い寄せられている黒いオイルのようなものが磁性流体

―― おお、これが!

 元々はNASAが開発したもので、磁石の細かいものが液体に溶けている状態と思っていいんですね。なので磁性体を近づけると、それに追従してくるんです。

―― おっ、これは結構な力で磁石が引っ張られますよ。

 ただ、これをフルレンジで使おうとすると、どうしてもスピーカーの動きが激しいので、耐久性が問題になります。飛び散ってしまったりとか。それを私の所属している音響設計部に、この磁性流体の研究をしている人間がおりまして、特別にスピーカーに適した磁性流体のチューニングに成功したんです。それがどれくらいのものか、これで試していただきたいんですが。

―― これはさっきのより全然強力! しっかり容器を手で持たないと、磁石にぶつかって割れそうですね。これは磁性流体の磁力が強いということですか?

 磁力が強い上に追従性があって、スピーカーの激しい動きにも耐えられるようなアレンジをしています。



後編に続きます



著者紹介――四本淑三

 1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。


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