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業界人の《ことば》から 第31回

本来のスピード感を取り戻す

非公開化で20周年迎える国内のデル、逆襲がテーマに

2013年03月21日 09時00分更新

文● 大河原克行

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買収・拡大戦略から一見撤退したようにも見えるが……

 デルは、2007年以降、買収戦略を加速させている。これまでに20社以上の企業を買収。コンサルティング大手のペローシステムズや、ストレージのイコールロジックおよびコンペレント。そして最近では、Quest SoftwareやSecureWorks、SonicWALL、さらにはシンクライアントのWyseなどの大型買収を行っている。

ソリューションプロバイダーとしての進化の方向性を進んできたデルだが

 一連の買収に共通した狙いは、ソリューションプロバイダーへの進化である。

 29年前にPC専業メーカーとしてスタートしたデルは、その後サーバー事業やワークステーション事業へも範囲を拡大。自らの体制強化のなかで成長を遂げてきた。だが、2007年にCEOに復帰したデル氏は、一転して買収戦略へと踏み出し、ソリューションプロバイダーへの進化へと方針を転換した。

 だが、米デルが発表した2013年1月末の2013年度業績は、売上高が前年比8%減の569億4000万ドル、純利益が32%減の23億7200万ドル。サーバー、ネットワークが力強い成長を遂げる一方で、デスクトップやモビリティ、ソフトウェア、サービスは苦戦している。

 PCのシェアは世界3位に転落。クラウド戦略でも遅れが出ている。

 こうしたなか、非公開化によって、目先の四半期業績よりも、中長期視点での投資や体質改善に取り組むことができるメリットがある。

 四半期利益の拡大よりも、PCからソリューションへの事業ポートフォリオの転換が早急の課題であり、その点でも非公開化は、企業価値を高めることを優先する体制構築につながる点でも効果的だろう。

 郡社長も、「非公開化は、ソリューションプロバイダーとして、エンド・トゥ・エンドのソリューションを提供するというビジョンに向かって、買収戦略を含めて積極化できるだろう」と語る。

 そこに「我々が正しいと思う方向に進むことができる」という意味がある。

 非公開化は、デルが失っていたスピード感を再び取り戻す近道だともいえる。

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