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今こそ見直したいバックアップとDR 第2回

最新のバックアップ技術はここまでおさえておこう

仮想化や新メディアの登場で大きく変わったバックアップ

2013年03月21日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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概論では、データ消失の危険性は身近にあるという点、そしてデータが損失した場合、ビジネスに大きな影響があることを説明した。今回は、最新バックアップを選ぶ際に、どのような点をチェックすべきかを解説していきたい。

最新バックアップは安価で使い勝手がよい

 バックアップというと、「面倒で、コストがかかるもの」というイメージがある。確かに1990年代のバックアップといえば、ハイエンドサーバーの基幹システムのデータを磁気テープに保存するといった作業であった。高価なテープライブラリやバックアップソフトが必要で、作業は専門のエンジニアが行なっていた。こうしたヘビーなタスクであるがゆえ、フロントオフィスのファイルサーバーやグループウェアのサーバーはおのずとバックアップの対象から外された。管理者はデータを手動でメディアにコピーしたり、フリーソフトを使うといった手段をとらざるを得なかった。

 しかし、状況は大きく変化しつつある。サーバーの台数が増え、データが増大したことで、多くの企業でバックアップにお金をかけられなくなった。また、ストレージの価格下落が急速に進み、メディアの導入がやりやすくなったという点も見逃せない。この結果として、バックアップのコスト自体が下がり、普及率の向上につながっている。特にスモールビジネスの市場では、バックアップの普及率が伸びている状況だ。

昔に比べて、最新のバックアップは大きく変わっている

 また、バックアップ製品も以前のように多機能・複雑なものではなく、非専任の管理者をターゲットにした使い勝手を重視する製品が増えてきた。ここ5年で、ファイルやフォルダ単位の細かいバックアップを前提とする従来型のバックアップソフトに加え、システム自体をまるごとリカバリできるイメージバックアップが台頭しつつある。最近のイメージバックアップソフトでは、システム全体だけではなく、ファイルやフォルダ、アプリケーションデータを意識したリカバリも可能になっている。設定も数多くのカスタマイズ項目が持つダイアログベースのものから、GUIのウィザードを駆使した使い勝手のよいものに変化している。ここらへんはぜひ製品を試用して、チェックしてもらいたい項目だ。

「メディアはディスクへ」が主流だが……

 バックアップに関して、この10年でもっとも大きく変わったのは、やはりディスクメディアの台頭であろう。前述した通り、1990年代はバックアップ用のメディアといえば、可搬性に優れ、大容量の磁気テープが主流だった。しかし、HDDの容量単価の下落は著しく、磁気テープのコスト的なメリットを奪うに至った。さらにHDDは高速で、ランダムアクセスに強いという特徴も持っており、容量面でも磁気テープを凌駕するに至るようになった。

磁気テープとハードディスクの違い

 こうした動向を背景に、データ保護のソリューションも一気に多様化した。ディスクベースのバックアップ製品も、当初は磁気テープの操作をエミュレーションしていたに過ぎなかったが、ディスクでの利用を前提にした機能が次々導入されるようになった。ある時点でのディスクイメージ自体を取得することで履歴管理を行なえるスナップショットや、データの同期を図るレプリケーション、そして後述する重複排除などだ。また、ディスクでのデータ保存であれば、ネットワークを用いた遠隔へのコピーもしやすいため、災害対策のソリューションも実現しやすくなった。

 この結果、昨今ではディスクベースのバックアップが主流になりつつあるが、磁気テープがなくなったわけではない。3・11の東日本大震災では、データのリカバリに成功した事例から、磁気テープの再評価につながっている部分もある。また、最新のLTO Ultrium 6では最大6.25TB(非圧縮時 2.5TB)という容量を実現しているほか、最大400MB/s(非圧縮時160MB/s)という転送レートを実現。さびにくく長期保存に向いたバリウムフェライト磁性体を用いた磁気テープも登場し、HDDに比べても高いスペックを実現しつつある。さらに最近ではHDDをカートリッジ型にした「RDX」のような規格も現れており、選択肢はますます増えている。

HDDをカートリッジ化することで、HDDとテープのいいとこどりを目指したRDX(写真はイメーションの「RDXカートリッジセキュア」)

 こうした動向だけに、ディスク対テープといった対立項目で捉えるのではなく、適材適所でメディアを選ぶ選択眼が重要になる。

(次ページ、仮想化の台頭でデータ保護が変わる)


 

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