山谷剛史の「アジアIT小話」 第43回

ベトナムでスマホよりノートPCが人気の理由

ベトナムでもiPhoneは人気!?

「安かったから妥協して買った」とiPhone 3GSを所有するベトナム人のチャンさん（26歳）

　前述したように、いまもノートPC全盛のベトナム（ハノイ）。そうはいっても以前よりは「iPhone」と書かれた看板の携帯電話ショップは増え、「Nokia」の字が書かれた看板のショップは減った。

夜には人々が外で食事をする。が、スマホをいじる人は少ない

　夜には屋台が並び、小さな椅子に座ってサラリーマンが食事をする光景が見られるが、こうした場所でもスマートフォンを触る人をちらほら見かけるようになった。

増え続けるiPhoneとGALAXYショップ

　現地の人々に聞き込みを行なうと、人気はまずiPhone、次にGALAXY。ツウな人はHTCを選ぶがそれ以上は出てこない。

FPTのAndroid搭載機器

　ベトナムブランドの「FPT」（日本でいえばNECのようなポジション）もあるが、国産支持！という声はなく、「国産とは言っても、中国製の部品を組み立てただけでしょ」と冷ややか。

　ベトナムの中でも特にハノイの人はメンツを大事にしているため、「とりあえずiPhone、ダメでも大画面で動画や写真が見られるGALAXY」という人は多い。

　iPhoneショップはあちこちにあり、これらの店ではiPhoneやiPad購入と同時にサービスとして“JailBreak”してもらった後、ベトナム語の海賊版アプリサイトであれこれインストールするのが一般的だ。この辺は中国と変わらない。

人気のサービスはFacebook
規制がかかっていても何のその

　中国では日本のようなキャリアと提携した0元スマホはあるが、ベトナムでは0ドンスマホはまだない。3Gデータ通信プランは1ヵ月500MB利用可能で5万ドン（約230円）と極めてお手軽で、スマートフォンを持っている人は3Gを利用するケースが多いようだ。

　一方でSIMカードを入れず、ベトナム人のノートPCの使い方のように（ないしはiPod Touchのように）、家や職場やWiFiマークのカフェなど無線LANが使えるところでスマートフォンを利用するという人もいる。

　スマートフォンの使い方の筆頭は、まずベトナムで人気のFacebook。スマートフォンで写真を撮り、それをFacebookに載せるというわけだ。バックアップ先としても使うため、スマートフォンのカメラで紙の上からスキャンするように撮り、機密資料だろうがFacebookに載せてしまう人が絶えないようだ。

　ベトナムではFacebookに規制がかかって、プロバイダーによってはアクセスできない。だがFacebookでベトナム人と仲良くなれば、10人100人とベトナム人の友人申請が来るほど、現在のところ人気のサービスであるため、利用者もカフェ店員も誰もがGoogle Public DNSを利用し、Facebookに迂回してアクセスする術を知っている。

決定的なスマホコンテンツのないベトナム
日本のコンテンツ事業者にもチャンスが!?

　Facebookの次はというと、動画サイトでの動画視聴や、世界で人気のゲームを遊ぶといった程度しかなく、ベトナム独自の何かがあるわけではない。

　まだ性能や機能からのスマートフォン選びができず、また何をしていいかわからない状態だ。こうした国で人々にローカライズした日本の面白アプリやゲームを与えると、いかにも日本という感じの日本的なコンテンツが好きになり、根付いてくるかもしれない。

山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で，一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。書籍では「新しい中国人～ネットで団結する若者たち」（ソフトバンク新書）を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」（インプレスR＆D）。