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なれる!SE 間違いだらけの?IT用語辞典(中二版) 第7回

スーパーカセットビジョン! そしてエレメカ……。

階層を飛び越えて、時空を歪めちゃいそうなIT用語

2013年03月14日 19時00分更新

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回答編



という技ではもちろんなくてね。



そりゃそうでしょう。


ネットワークの階層モデルにおいて、異なるレイヤ(層)の情報をもとに色々処理したり判断したりすることを階層侵害、すなわちレイヤ・バイオレーションと呼ぶのよ。



階層モデル……侵害ですか?


OSI基本参照モデル*3ってあったでしょ? コンピュータネットワークの要素を複数のレイヤ(層)に分けて、各レイヤの処理はその中で完結させるって考え方。



………。


あんた、まさかこんな基本的なこと忘れたんじゃ(ドライバー抜刀)


まさか! まさかちゃんと覚えてますよ。ええっと……物理層でコネクタ形状を決めて、論理層でMACアドレスとかイーサネットフレームのやりとり、ネットワーク層でIP通信ってやつですよね。


なんでスマホ見ながら喋ってるの?
……ま、いいわ。そう、ネットワークシステム全体を一つのプログラムで作っちゃうと新技術が出た瞬間全部作り直しになるから。階層分けしてパーツパーツの入れ替えを可能にする。有線LANが無線LANになっても上位層のTCP/IPはそのまま使えるでしょ? それと同じ話ね。


ああ……思い出しました。TCPセグメントはIPパケットにくるまれて、IPパケットはイーサネットフレームにくるまれて……基本的に中身が何だろうと気にせず運びますってやつですね。


そうそう。で、ネットワーク層のIPは本来ならIPアドレスで宛先・配送経路の選択をするはずだけど、レイヤバイオレーションはここで別階層の情報を参照しちゃったりするのよ。


別階層?


たとえばメール通信だから専用線網に流そうとか、ウェブ通信だから複数回線にバランシングさせようとかそういう動作をする、ルータが。


便利じゃないですか。


便利は便利よ。ただいわゆるIP的なルーティングテーブル(配送先一覧)から外れた挙動になるからトラブルシューティングは難しくなるわね。traceroute*4とかそういう一般的な経路確認手法も使えなくなるし。


……うーん、運用的には厳しそうですね。


そうね、だから業界的にはずっとタブー視されてたんだけど最近こいつを意識的に使いこなそうって動きも出てきてるのよ。


というと?


Software-Defined Network(SDN)。ネットワーク装置の転送機能と経路制御機能を分離して、既存のルーティングやスイッチングにとらわれない柔軟な通信を実現しようって考え方。コンセプトは明確だしメリットもいっぱいあると思うけど……やっぱり運用部分がネックよね。実際、いざ導入ってなると二の足を踏むユーザーも多いみたいだし。


誰しも自分がトラブル事例の開拓者にはなりたくないですものね。


システム構築の柔軟さと運用管理のしやすさはトレードオフだからね。まぁ昔はイーサネットをWANで使うの嫌がってた*5時代もあるわけだし、結局はマーケットが新しい技術を取捨選択していくんじゃないかしら。


………(真面目な話になってしまった)。


というわけで格好良くシャウトして締めるわよ!
いきなさい桜坂!


え、え? このテンションからいくんですか? わ……分かりました!
階層侵害、次元断層、滅殺! レイヤ・バイオレー……へ、へっ、へっくしょい!


………(台無しだわ)


(*3)コンピュータネットワークの機能を階層イメージで概念化したもの。OSI=Open Systems Interconnectionの略
(*4)宛先ホストを指定することで、途中通過するルータを表示できるコマンド。障害発生時などにどこまで通信が行えているか確認可能
(*5)イーサネットはLAN(ローカルエリア)用の技術として開発されたことから広域接続に使う際の安定性が疑問視されていた


【解説】

レイヤ・バイオレーション
コンピュータネットワークにおいて異なる階層の情報を元に処理・判断を行うこと。運用上避けるべき実装とされるが最近はSDNなどでこの手法を有効活用しようという動きもある。いわゆるVPN(仮想プライベート接続)の一部もこのレイヤ・バイオレーションに抵触している。

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