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4K2K時代に向けた、シャープの誇りと熱意

並外れた高級機、ICC PURIOSはどんな映像体験を提供するか

2013年03月15日 11時00分更新

文● 鳥居一豊

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フルHDソースでも4Kに近い情報が生み出せる
多彩なソースを楽しむための画質モードも充実

 4Kテレビに対する批判的な声には、高価格であることのほかに、4Kテレビの真の実力を発揮するであろう4K映像ソースがないこともある。結局フルHDのテレビ放送やBDソフトを見るのならば、4Kテレビである意味はないというものだ。

 しかし、ICC技術によって4K化された映像は、元がフルHDソースであっても、4Kテレビでしか得られない高精細さとその場に居るような臨場感が味わえる。これには単に高精細なパネル表示だからというだけでなく、れっきとした理由があるのだ。

「昔の70ミリフィルムで撮影した作品のオリジナルネガを、4Kや8Kでスキャンしてマスタリングしたタイトルも増えています」と語る小池氏

小池 BDで発売される映画では、すでにフルHD以上の高精細さで撮影した作品があります。昔の70ミリフィルムで撮影した作品のオリジナルネガを、4Kや8Kでスキャンしてマスタリングしたタイトルも増えています。これらは、最終的にフルHDでBDソフト化されるわけですが、フルHDで撮影しフルHDでソフト化されたものよりも、高画質だと思う人は多いと思います。フルHDのテレビでも違いが出るのですから、4Kテレビならば元々の4Kの情報がかなりのレベルで復元されるのは当然です。

 4K制作のための撮影カメラなどはかなり普及が進んできており、実際に最新映画の映像はどんどん緻密さを高めてきている。同じBDといっても、映画の作り方が変わってきているのだから、映像はどんどん進化しているそうだ。

 そういえば、DVDの登場初期に手に入れたDVDソフトと、HDマスタリングでDVD化されたものを見てみると、その画質の差に愕然とする。同じSD解像度でどうしてこんなに画質が違うのかとわかるのは、現在のフルHDテレビで見ているからだ。

 このときには、映画でもデジタル制作が急速に進み、HDマスタリングなどが普及したことで画質が向上した。それは、薄型テレビによるハイビジョン解像度での視聴を見越した進歩だった。4K制作や4K以上のマスタリングが進んでいるのは、同様に4Kテレビ時代を見据えたものであり、同じフルHDでも4Kテレビで見ると違うということになるのだろう。

 では、地デジなどのテレビ放送はどうだろうか? フルHDテレビで見ていても、地デジはノイズなどが目立つ。アップコンバートや超解像技術では効果を高めすぎるとそうしたノイズも一緒に増加してしまうことがあり、4K化しても効果が薄いのではないかと思われがちだ。

小池 LC-60HQ10には、複数の画質モードを揃えており、さまざまな映像ソースに対応できるようにしています。ICC技術が盛り込まれたものだけでも、ICCと標準、そして映画/映画THXの4つがあります。ノイズの少ない良質なコンテンツならICCを、デジタル圧縮ノイズが目立ちやすい場合は標準を選んでいただくと、どちらもICCによる高精細な映像を楽しめます。

 良質なソフト向けのICCモードは、ICCの技術が100%発揮できるもので、標準ソースはノイズリダクションをしっかりと効かせて、まずノイズを解消してからICCによる4K化を行っているという。ノイズリダクションは見やすい映像になる反面、微細な情報も消してしまう弊害もある。これは当然4Kでの情報量の復元に悪影響にあるので、ノイズリダクションなしのICCと、ノイズリダクションありの標準を用意しているわけだ。このほか、標準モードではコントラスト感を強めたメリハリをつけた味付けを加えているとのことだが、色については過度に鮮やかさを強調してはいないそうだ。華やかではないがリアルに感じられる色。これがICCによって臨場感を増した映像に合うとのことだ。

画質モードを詳細に設定できる

 実際に地デジ放送を見ても、精細感の高さは明らかに違う。ニュースなどを見ていても、クローズアップされた出演者はもちろん、背景に見えるスタジオのセットなどがより鮮明になる。出演者の輪郭を強調して立体感を演出したのと違い、出演者とスタジオセットの距離感がしっかり再現されるので、実に自然な立体感がある。

 これが、ドラマなどより質の高い映像で制作されたものならば、さらにその差は際立つだろう。

 続いては、映画だ。ICCがカメラのレンズによるぼやけさえも解消し、見たままの景色を復元することはすでに述べた。しかし、映画のような表現芸術としての作品は、レンズぼけを含めて作り手の意図が込められている。一般的な手法としても、場面の中で視線を向けてほしいもにフォーカスを合わせ、それ以外のものはぼかしてしまうといった撮り方はカメラ撮影などでも行うだろう。ICCでは、そうした制作者の意図は損なわれてしまうのではないか?

小池 映画における制作者の意図を損なってはいけないということ、元の映像に忠実であることということは、AQUOSの映画モードの開発で一番大切にしてきていることです。もちろん、LC-60HQ10でも同様の思想でICCの効かせ方に調整を加えています。

作品によって解像感を調整して楽しめる

コアリングの調整画面

 これが、「コアリング」というもの。映画モードにもICC技術は盛り込まれているが、ユーザーのお好みで「解像感」を微調整できるようになっている。例えばユーザーのお好みで最大の設定にした場合は、フォーカスアウトした部分にもICCが効いてしまい固い映像になる場合がある。ここで、コアリングを効かせていくと、その硬さがやわらいでくる。コアリングによって、ICCを効かせるべきでない部分を判別してその効果を抑えるように働いているわけだ。

 だから、映画を見る場合も、映画の作り手の意図に忠実で、しかもフォーカスの合った部分にはICCによる臨場感豊かな再現が得られるという映像が楽しめるわけだ。こうした機能をユーザーが好みで選べるというのもうれしいところ。作品によっては、全体にフォーカス感が物足りないこともあるし、カリカリで硬すぎると感じるものもあるので、ソフトに合わせて調整できるのは、重要なところだろう。

 実際に4K制作された映画を見せてもらったが、石造りの路面や壁の質感、服の生地の感触までわかるような再現は、フルHD表示とはかなりの差が合った。また、暗部の階調が極めてスムーズなことにも感心した。比較で表示したフルHD表示は全体に映像が明るめのバランスで暗部で黒浮きが感じられた。LC-60HQ10は映像全体はより暗いのに、暗部に関してはむしろ見通しが良いのだ。これも階調感の豊かさや暗部までしっかりと情報が蘇っているためだろう。

 なお、映画THXはTHX規格の規定に沿ったもので、より厳格なモニター的な再現になるモード。このほかの画質モードには、ゲーム/PC/フォトがあるが、これらにはICC技術は使わないシャープ独自の4K変換だという。ソースの映像をそのまま表示することを想定した忠実度優先の作りだという。ムービーシーンの多いゲームなどはICCが欲しいと感じるが、その場合は、好みでISSや標準を選ぶといいだろう。

小池 ブラウン管や初期の薄型テレビのSD時代は、精細感の不足を輪郭強調で補う手法の映像再現でした。HDでは精細感は得られましたが、コントラスト感が不足しており、それを補うための手法が必要でした。4Kになり、ようやくすべての弱点がなくなり、映像本来の魅力を存分に味わえる映像が楽しめるようになりました。そうなれば、映像表現もますます高精細を生かした、見たままの映像に近づくでしょう。

 LC-60HQ10が、ICC技術とシャープのすべてを投入したパネル/テレビ技術で目指したものは、これからの映像表現の先取りとも言えるような気がする。

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