SCDSで小型・低価格に
―― あのUSBスピーカーはバスパワーを使っていたから、SCDSのメリットもあったと思うんですが、今回の電源はACアダプターです。SCDSのメリットはどこにあるんでしょう?
川崎 まず、今まで通りの電源で音質を高めようとすると、大型のトランスやコンデンサーが必要になるので、このサイズには収まりません。それに大型のトランスやコンデンサーで電源を作るにはお金もかかる。それは我々の目指している製品には合わない。このサイズと価格でこの音が出せるのは、SCDSという方式だからですね。
山本 これは充電したコンデンサーを電源に使う、電池駆動みたいな方式なんです。
川崎 普通のアンプの設計は、アンプ本体で消費する電力を100%電源側が供給するという考え方なんですが、このACアダプターは、アンプ本体で使う電力とは直接関係なく、ただコンデンサーを充電するだけです。それがバッテリーオペレートに近いという意味です。
―― ということはバッテリーを使っても同じことができるんじゃないですか?
川崎 するとまたバッテリーが結構大きなものになってしまう。それを充電したり管理したりという仕組みも必要になります。実用性を考えるとちょっと難しいんです。
―― では小さいアンプはほかにも沢山ありますが、それとはどう違いますか?
山本 通常の小さいアンプは低音を再生する力が足りない。エネルギーが非常に大きな信号なので、電源が弱いとそれに追いつかないんです。特に低音の音階は、すごく大変なんですね、アンプが追従するのは。
川崎 今までのやり方で小さく作っただけのものでは、やはり限界があります。低音は、ただ量が出ていればいいというのではなく、音源として記録されている波形がそのまま出れなければ、音階も綺麗に出ないんです。
それでは大きなアンプが存在する理由とは何なのか
―― 同じクオリティーのアンプをSCDSを使わずに作ったら、どんなものになりますか?
川崎 サイズで言ったら430mm(通常のオーディオコンポの横幅)は必要になりますよね。高さが200mmで奥行き300mmくらい。
山本 結局、それは大きなトランスを入れるということになるんですね。トランスを大きくするとシャーシも丈夫でなければいけないんです。だからケースも重くなっていく。
川崎 大きい電流を流すことを考えると、発熱もすごく大きくなるので、大きなヒートシンクも必要になる。すると全体がどんどん大きくなっていくわけです。それもオーディオのロマンとしてはアリですよね。「お前のより俺のほうが重たくて大きいぞ」って自慢できるわけです。でも、それを家庭のリビングに置けますかと言ったら、できないですよ。それで最初の話に戻るわけです。
―― なるほど。それにしても何でトランスは大きくなってしまうんですか?
川崎 小さなトランスと大きなトランスを使って聴き分けると、やっぱり大きなトランスのほうがいい音がするんです。すると設計者は大きなトランスを使いたい。アンプという商品も大きいものが良しとされているから、お客さんもそっちを望むだろうと。それで50kg、60kgの一人じゃ持てないようなものも商品としてはあるわけです。だから設計の手法を変えない限り、どんどんそっちの方に行ってしまう。
山本 自動車のエンジンと同じですよ。3000ccのエンジンと、600ccのエンジンでは、加速性能に差が出てくる。ハイブリッドカーはその加速性能を排気量に頼るのをやめて、小さなエンジンにモーターとバッテリーで補っているわけですよね。それがSCDSの考え方です。
川崎 それにOlasonicがほかのオーディアンプと同じ物を作っていても、誰も喜んでくれないわけです。
山本 ほかにいくらでも大きくていいものがありますから。
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