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最新スマホも続々登場! Mobile World Congress 2013レポ 第23回

AppleとGoogleに逆襲開始? MWCで注目の新OSをまとめた

2013年03月05日 18時00分更新

文● 末岡洋子

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第3のOS登場に期待が集まる背景に
AppleとGoogleに反感を抱く携帯事業者

 このような新しいOSが誕生するという動きはいくつかの点から分析できるだろう。

 まずは、オペレーターの焦りがある。iOSやAndroid(Google)にアプリの売上を持っていかれ、通話やメッセージといった基本的なサービスもアプリストアから入手したViberやFacebookなどのアプリで代用されている。特にFirefox OSとTizenはオペレーター側の要望が主導となって動いているようにみえる。

 たとえばFirefox OSを見てみると、モバイルでのWebが制限を受けていることを問題視したMozillaが「Boot 2 Gecko(B2G)」としてレンダリングエンジンのGeckoを土台にモバイルOSを開発する可能性を探っていたところ、MozillaのフォーラムでB2Gを知ったTelefonicaがアプローチしてきたのがきっかけという。

 Firefox OSに対するTelefonicaのコミットは目を見張るものがあり、スペイン、南米からスタートし、2014年以降は同社が展開するすべての市場でFirefox OSスマホを投入するという力の入れようだ。ブースでも大々的にデモしていた。CEOのCesar Alierta氏は、「戦略的イニシアティブ」と述べると同時に、「2社による独占はメリットを生まない」とAndroid(Google)とiOS(Apple)への対抗心を隠さなかった。

Firefox OSに一番力を入れるのが、スペインをはじめ、欧州・中南米でサービスを展開するTelefonicaだ

 KDDIの石川氏は、iOSとAndroidに配慮して「(この2種を)否定するものではない」と繰り返したが、Firefoz OSの発表会では、それ以外のオペレーターはGoogleとAppleへの不満を隠さなかった。「アプリストアが閉鎖的」「相互運用性がない」「(Firefox OSなら)オペレーターがコントロールできる」「オペレーターが収益を得られる新しいエコシステムが必要」(Teleckom ItaliaのFranco Bernabe氏)などの声が出ると、各オペレーターのトップは強くうなずいていた。

 Firefox OSとTizenについては、政治的要素も感じた。世界のモバイルオペレーターは日本のオペレーターとは異なり、ホーム市場のほかに複数の国で展開している。そのため、競合の関係であることが多い。

 たとえばFirefox OSに力を入れるTelefonicaはスペインが本拠地だが、欧州では買収したO2を通じてイギリス、ドイツなどにサービスを展開。ブラジル、コロンビアなど南米にも進出している。

 一方Tizen陣営のFrance TelecomのOrangeはもちろんフランスが本拠地だが、スペイン、イギリス(EE)、アフリカなどでも展開している。また、Vodafoneはイギリスを本拠地としながら、スペイン、ドイツなどでも展開している。つまりビジネスは重なっているのだ。Firefox OSとTizenのメンバーを見ると、オペレーターの顔ぶれは異なり、どちらにつくのかが政治的判断でもあったことが伺える。

 そういった点で勢いを作っているのは、参加企業数が多くローンチが早いFirefox OSといえるだろう。TizenがFirefox OSよりも登場が遅いことについて、France TelecomのMaitre氏は「急いでいない」と述べたが、Tizenの発表会場の外である参加オペレーターの出席者は、「Firefox OSが予想以上に速く進展しており、パートナーも集めている。Tizenは遅すぎるのではないかと不安もある」と漏らしていた。

 このほかに市場のニーズもある。スマートフォンが普及期に入り、各社が挙げているように途上国市場に拡大していくためには安価な機種が不可欠という事情が1つ、そして新しいスマートフォンへのニーズ開拓も考えられる。2007年のiPhone登場から6年が経過しようとしており、リフレッシュの時期にきているとみることもできる。現在のスマートフォンのユーザーインターフェースはiPhoneが導入し、それをAndroidが踏襲した。iPhoneについては、そろそろユーザーインターフェースを刷新する必要があるという声もある。

一方で懐疑的な端末メーカー

 「(Firefox OSの)成功を確信している」とDeutsche TelekomのRene Obermann氏は力強く語ったが、CSS Insightのアナリスト、Ben Wood氏はZTEの初のFirefox OSスマホ「ZTE Open」の発表会の席で、「前にもこのような取り組みがあったがうまくいかなかった。Android端末の価格は下がっており、Firefox OSの価格競争力がどれぐらいあるのか疑問だ」と首をかしげた。

 オペレーターが大きな期待を抱く一方で、端末メーカーの方はどちらかというと懐疑的にみえる。LGもソニーモバイルも、Telefonicaの強い要望があったために参加しているというスタンスのようだ。新しいOSで端末を開発する投資はばかにならない上、Androidという安全な選択肢がある。これらのOSが本当にユーザーに訴求できるのか、エコシステム(アプリ)はちゃんと成長するのかを危惧する声も聞かれた。

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