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オールフラッシュアレイ戦略を読み解く

急がば回れ?フラッシュOS開発の道を選んだネットアップ

2013年03月04日 06時00分更新

文● 渡邊利和

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ベンチャーとの開発競争に対して

 フラッシュストレージは、HDD互換のSSDから市場が広がり始めたこともあって、単にHDDをSSDに置き換えるだけで実現できそうなイメージもあるが、実際にはフラッシュの特性に合わせたシステム構築が必要となるものであり、いわば“外観は同じだが中身は別物”といった製品になることがはっきりしてきた。

 HDDの特性に合わせて最適化し、欠点を隠蔽して最大限のメリットを引き出すために開発されたストレージOSであるData ONTAPで市場を席巻したネットアップは、まさにストレージOSの重要性を熟知するストレージベンダーであり、それ故Data ONTAPに固執することなく新たにフラッシュ専用ストレージOSの開発に乗り出したのだと考えて良いだろう。

マッコーニー氏とともに、主にストレージOSの現状などの技術面での質問に回答してくれた同社のバイスプレジデントのティム・ラッセル(Tim Russell)氏

 これが、主要エンタープライズストレージベンダーのフラッシュストレージ対応に時間を要している理由ともなっていると考えられる。ゼロから新規にフラッシュ専用ストレージOSを開発するのも簡単ではないだろうが、既存のHDD向けストレージOSの機能や信頼性を維持したままフラッシュ向けにカスタマイズするのもまた困難な作業だと考えられる。Data ONTAPとの親和性を高め、Data ONTAPとの間でのレプリケーションもサポートする予定だというFlashRayの市場投入までまで1年近くかかるのも、そのあたりが理由だと推測される。

 ネットアップでは、フラッシュストレージ市場がベンチャー企業によって急速に開発されつつある現状は強く意識しているようで、ベンチャー製品に対する優位性を訴えるメッセージが繰り返し聞かれた。

 なかでも同社が強調したのが、「エンタープライズクラスの機能性/信頼性の確保」と「コンシステンシー」だ。コンシステンシーは、データの一貫性という意味でも使われる言葉だが、ここでは「パフォーマンスの安定性」と言い換えた方がわかりやすいだろう。フラッシュメモリの特性上、データ読み出しは安定して高速だが書き込みや書き換えといったオペレーションでは驚くほどの遅延が発生することがある。この点に対して何の対処も行なわない場合、システム全体のパフォーマンス変動が大きくなり、性能予測が困難になる。同社ではつねに一定のパフォーマンスが安定的に発揮できるようなさまざまな技術的な工夫を盛り込んでいるといい、この点がピークパフォーマンスのみに注目しがちなベンチャー製品との差だという。

 さらに、「ベンチャーは米国中心にごくわずかな拠点しか持たないが、グローバル企業では製品に対してもグローバルサポート/グローバルデプロイを求めるため、グローバルに活動するベンダーでないと要望に応えられない」(マッコーニー氏)という指摘もある。いち早く“エッジ”のテクノロジーを採用することで差別化要因とするか、安定的/長期的な信頼感を重視するか、ユーザー企業側の考え方にも大きく依存する部分だが、現段階でベンチャー製品の市場投入がやや先行しているとしても、エンタープライズストレージベンダーとしては早いタイミングでのフラッシュストレージ投入を実現したネットアップは、決して取り組みが遅れているわけではない、ということになる。

 長期的にみれば、最終的に市場で支持される製品を決めるのはフラッシュストレージ用OSの完成度ということになりそうだが、現時点では予測は難しい。ただ、フラッシュストレージを既存のエンタープライズストレージの発展系ではなく、“中身がまったく別物”だと考えるなら、既存製品のシェアの高さは必ずしも決定的な優位ではないということは言えそうだ。いわば、新規市場におけるゼロベースの競合がスタートするわけで、ユーザー企業にとっても今後の動向から目が離せないだろう。

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