モバイルビデオという新しいメディア
米国では2009年からLTEが利用され始め、まずはAndroidデバイスを中心に対応が進みました。2012年についにiPhone 5がLTE対応を果たしたことで、一挙にユーザー数が増えました。都市部では速度の低下などが指摘されていますが、それでも2Gや3Gという比較対象を考えれば、不満はありません。
それ以上にカバーエリアの充実が望まれています。幸いなことに、日本と違って、3Gの頃からデータプランは従量制になっており、LTEになってもその単価は変わらなかったため、日本のように「高い料金を払っているのにLTEが使えないじゃないか」といった不満もなさそうです。
ダウンロードだけでなくアップロードもスピードアップしたスマートフォンで、今年期待されているのがモバイルビデオです。視聴する方はYouTubeなどですでに当たり前になっていますが、今度は撮影してアップロード/共有する方のモバイルビデオです。
これまでもiPhoneやAndroidで撮影したビデオは、YouTubeにアップしたり、Twitterにシェアしたり、といったことができました。スマートフォンのカメラはフルHD動画を撮影でき、家の薄型テレビで再生しても遜色ありません。LTEはこれらのビデオのアップロードを身近にしてくれるでしょう。
しかし動画の高画質化、ネットの高速化の環境が整ったからといって、ビデオがすぐにたくさんシェアされるとは限りません。
写真に立ち戻って、考えてみる
おそらく皆さんも経験があると思いますが、ただスマートフォンで撮影しただけの動画に”見応え”が生まれることは、よほどの決定的瞬間がない限りは希です。撮影している自分がそう思うので、他の人がその動画に何らかの価値を見出してくれることは難しいでしょう。
例えば先日ロシアに落下した隕石は、無数のドライブレコーダーによってとらえられ、すぐにYouTubeを通じて共有されました。ニュース映像よりも多数の映像がウェブで見られることに、あらためてネットのすごさを体験したのですが、あのような決定的瞬間は、そのままでも十分な見応えがあります。
ただスマートフォンでずっと映像を回し続けているわけにはいかないので、こうした映像をとらえるチャンスは非常に少ないと言えるでしょう。ではどんなビデオを意図して作れば、まず自分、そして周りの友人に“見応え”がある動画として見てもらえるでしょうか。
ここで、写真のことを振り返ってみましょう。スマートフォンの最も重要な機能の1つとして挙げられているカメラで、800万画素、1000万画素といったスペックの高まりは留まるところを知りません。
しかしスマートフォンの写真で最も流行っているサービスはInstagramです。カメラロールには最大2048×2048ピクセルの加工済み写真が保存されますが、共有される写真の解像度はたった612×612ピクセル。もちろん元のカメラの画質やレンズによって、加工後の写真の品質も変わりますが、決して高性能なカメラの高精細な写真をそのまま共有できたから流行ったわけではないことがうかがえます。
スクエアに切り取られること、印象的な写真を作るためのフィルター処理などの、Instagramが用意した写真を共有するための「型」が、写真作りを簡単にしてくれているように感じます。
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