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前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック” 第12回

長かったり、短かったり… 時間の不思議な感覚

2013年03月08日 09時00分更新

文● 前田知洋

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 マジックを見せたときの観客の反応のパターンはいろいろある。それでも「うぁ!」と驚いたり、口を空けてポカンとしてしまうパターンがやはり多い。最近目立つのは「うぁ!マジックみたい……」というボケ・パターン(「だから、マジックだっつーの!」と誰かのツッコミを待つタイプ)。そんなリアクションで、一番印象に残っているのは、「わかった!時間を止めてるんでしょ!」という言葉。時間を止められるんだったら、マジシャンではなく、きっと他の仕事を選んでいると思うのですが……(笑)

どんなときに時間の感覚は変わるのか?

 子供の頃、興味のない授業の時間はゆっくり進み、終業のチャイムが待ち通しい。逆に楽しい時間はあっという間に過ぎていく。仕事が忙しければ、一週間はあっという間だし、年齢を重ねるにつれて一年も早く過ぎていく。

 加齢は別として、簡単にまとめてみると、「楽しい」とか「気分がいい」など、快楽を感じているときは時間は早く過ぎ、「つまらない」「つらい」「恐怖」などのストレスを感じると時間はゆっくりと過ぎていくことになる。

○時間を早く感じるとき
朝、ベッドから出たくないときなど
気の知れた友人や恋人と過ごしているとき
自分の好きなスポーツや読書など、好きなことに熱中しているとき

○時間をゆっくりと感じるとき
内容が理解できにくい、興味を感じられない会議や打ち合せなど
単調な作業など、興味が少なく、変化に乏しい状況
事故や災害など、恐怖を感じる状況

 こんなふうに状況によって変化する時間の感覚。それを意識的にコントロールするには、心と身体がキーワードになる。

時計は人間の曖昧な感覚を他者とあわせるための道具でもある

数秒が重要になる生放送

 「テレビジャック」という仕事を何度かしたことがある。たいがいはプライムタイム(日本では19:00~23:00の時間帯)に放送される番組の宣伝をするために、朝の報道番組に出演して、同じ日の午前中の情報番組に登場する。次に、昼のバラエティに出て、午後の番組にも出るというモノ。そのほとんどが生放送。

 朝の番組などは、もちろん情報番組は放送内容が立て込んでいるため、ディレクターはマジックを「できれば……、1分25秒でお願いします」なんて無理をいう。マジックは最後の瞬間に不思議なクライマックスシーンがあるのがほとんどだから、それがうまく放送枠におさまらないと、CMに入ってしまい、マジックは意味不明なモノになってしまう。最初の頃は、カメラの向うにある時計の秒針を見ながら、恐る恐る進行していたけれど、慣れてくると、2分でも4分でも、時計を見なくてもたいがいピッタリにおさめられるようになってくる。例えれば、プロボクサーが1ラウンドの3分を体内時計でピタリとわかるようになるのと似ているかもしれない。

報道番組は秒刻みで進行する。生放送前にマジックの道具をチェックする筆者

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