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目指すは都市交通網の最適化

「ヘイロー」で流しのタクシーが消え去る?

2013年03月11日 07時00分更新

文● 澁野義一/アスキークラウド編集部

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タクシーの実車率を上げて交通インフラを最適化

 ヘイローが促すのは、運転手と乗客のコミュニケーションだけではない。刻々と変化する交通状況に対応するために、運転手同士がアプリで情報を交換・共有する機能も備えている。例えば、通りがかりのホテルや結婚式場といった施設でタクシーの需要がありそうな場合、アプリの地図に入力してリアルタイムで運転手ネットワークに共有する。乗客をさばききれない場合は、タップひとつで付近のタクシーに応援を要請できる。

タクシー運転手専用のアプリ。需要がありそうな場所をイベントの形でリアルタイムで入力・共有できる。「ニーズ」という表示はイベントの規模を指し、表示を小/中/大から選べる。運転手同士のやり取りを円滑にするための機能だ

 さらに運転手には、コンサートやお祭りといったイベント情報が配信される。Twitterを分析して電車の遅延や運転見合わせといった運行情報を抽出し、運転手に伝える機能もある。運転手同士のコミュニケーション/タウン情報の配信/ソーシャルメディアのビッグデータ分析という3種類のサポートで、タクシー運転手と乗客がマッチングする機会を増やしているわけだ。

 すでにロンドン/ダブリン/トロント/シカゴ/ボストンの2万4000台のタクシーが、ヘイローを使って運行している。特にロンドンではサービスインから1年で総台数の50%にあたる9000台が導入し、21万人のユーザーが同社の配車アプリを利用している。日本のタクシー市場規模は1兆8000億円。うち東京は4300億円を占め、これだけでロンドンやニューヨーク市場の2倍に相当するというだけに、同社はシェア獲得に期待する。

 ヘイロー・ジャパン代表取締役社長の藤井清孝氏は、「我々が目指しているのは、一番近くて一番便利なタクシーを、オンデマンドで配車すること」だと語る。そのためには、タクシー会社を超えて配車するシステムが必要になる。藤井氏の狙いは、ヘイローをタクシー業界共通のプラットフォームとして、複数の会社に相乗りして使ってもらうことだ。システムの導入コストも不要で、特定のタクシーブランドを持たないヘイローは、中小や個人のタクシー業者も使いやすい。

 タクシー運転手と乗客をマッチングして運用を効率化すれば、既存のタクシー網を活かしたまま乗客の満足度を上げられる。10年前には年間23億4400万人だった輸送人員が17億8300万人にまで落ち込んでおり、乗車率の低下に悩むタクシー業界にとって、強力なカンフル剤になるはずだ。


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