スピードと柔軟性を削ぐ、オンリーワン
もうひとつは、オンリーワン技術の創出は、ハードルが高く、これがスピード感に欠ける事業構造化を生む温床になろうとしていた点だ。
奥田社長は、オンリーワンという言葉を、「ホームラン狙い」とも言い換える。
他社との圧倒的な差別化を持ったオンリーワン技術は、当たれば大きいが、なかなか出ないのも事実だ。まさにホームランと同じである。
ホームランに頼る経営から、「スモールヒット」の積み重ねによる経営へとシフトするのが、奥田社長が掲げる「顧客重視のナンバーワン」ということになる。
それによって、スピード感と柔軟性を持った体質へと転換する狙いがあるのだ。
だが、顧客重視のナンバーワンとは、単にシェアナンバーワンを目指すことを指すのではない。
奥田社長は、「新しいチャネル、新しい顧客、新しいエリア、新しいカテゴリーの4つのマーケティング視点でのナンバーワンを目指す」と、その意味を説明する。
シャープでは、16あったビジネスユニットを、デジタル情報家電事業ユニット、健康環境・エネルギー事業ユニット、ビジネスソリューション事業ユニット、デバイス事業ユニットの4つのビジネスユニット体制に移行。さらに、BtoC、BtoB、BtoMの3つの顧客軸の基にした社内カンパニー制を2013年4月から導入する考えであり、これにより、4つのマーケティング視点でのナンバーワンを目指すことになる。
「オンリーワン」という言葉を封印し、「ナンバーワン」という言葉を打ち出したシャープの方向転換が、同社再建の切り札になるかが注目される。
この連載の記事
-
第587回
ビジネス
メーカー自身が認定し、工場検査後に販売するパナソニックの中古家電 -
第586回
ビジネス
マイクロソフト、日本への4400億円のAI/データセンター投資の実際 -
第585回
ビジネス
日本市場の重要性を改めて認識する米国企業、変革期にある製造業がカギ -
第584回
ビジネス
NTT版の大規模言語モデル(LLM)、tsuzumiの商用化スタート、勝算は? -
第583回
ビジネス
エコ投資に取り組むエプソン、見方によっては10年で1兆円の投資も -
第582回
ビジネス
パナソニックコネクトの現在地点、柱に据えるBlue Yonder、ロボットとは? -
第581回
ビジネス
スタートして半年の日本NCRコマース、軸はAIとプラットフォームの2つ -
第580回
ビジネス
コンカーの第2章は始まるのか、SAPの生成AIを使って効率的な経費精算を -
第579回
ビジネス
AIの筋トレはいまから始めるべし、マイクロソフト津坂社長がCopilotの議論から得たもの -
第578回
ビジネス
大赤字からの再起はかるバルミューダ、その足掛かりは? -
第577回
ビジネス
日本の強さは量子力学におけるトンネル効果があるため、量子と出会い、広げよう - この連載の一覧へ