発熱は大きいが、ディスプレーの美しさは抜群
今回試用しているモデルは、CPUにIntel Core i7-3537U(クロック周波数2GHz)を採用したもの(「New XPS 13 プラチナ・フルHD液晶」)。モバイル向けとしては十分な性能であり、動作の遅さを感じることはあるまい。「Windows インデックスエクスペリエンス」の値は「5.6」。ボトルネックはグラフィックスなのだが、ストレージの値が「8.1」と高い点に注目だ。
発熱については、他機種に比べちょっと目立つ印象がある。特に、底面中央奥の発熱は、平常動作時・フルパワー時共に大きめだ。冬場は問題ないが、夏に膝の上で使うと、少し不快に感じるかもしれない。これは、ボディ全体で積極的に放熱する構造であるからだろう。パームレストは快適だが、キー面は若干暖かくなりやすいので、そこが気になる人は注意が必要だ。
発熱状況(独自調査/放射温度計による測定。外気温21度の場合) | ||
---|---|---|
— | アイドル時 | フルパワー時 (H.264動画エンコード時) |
底面左側 | 約23度 | 約28度 |
底面中央 | 約35度 | 約43度 |
底面右側 | 約30度 | 約39度 |
表面左側 | 約23度 | 約31度 |
表面右側 | 約29度 | 約33度 |
パームレスト左側 | 約23度 | 約24度 |
パームレスト右側 | 約23度 | 約25度 |
「BBench」によるバッテリー持続時間ベンチマークの結果は、最長で約5時間半。バッテリー固定型で重量も1.3kg台ならば、十分満足できる値といえるだろう。大容量バッテリーなどは用意されていないので、逆にいえば、これ以上動作時間を延ばしたい場合、ACアダプターの併用が必須だ。
バッテリー持続時間ベンチマーク(BBench) | |
---|---|
— | 動作時間 |
バランス | 約4時間56分 |
省電力 | 約5時間32分 |
New XPS 13には複数のモデルが存在しており、1月29日に追加されたのが、今回紹介している上位モデル「フルHD液晶搭載モデル」である。違いは簡単。ディスプレー部がフルHDになっていることである。
このサイズでフルHDというのは、かなり密度が高く美しい。モバイルノートで、ウェブサイトを複数枚開きつつ、画像サムネイルを「大」にして表示しても不快でないというのは、やはりインパクトが大きい。OS標準設定の解像度では、文字が小さくて読みづらいほどだ。ディスプレーの設定を変更し、文字やアイコンを拡大した形で使うことをお勧めする。OS上はいろんな設定が可能だが、筆者としては125%あたりが適切かと感じる。
Windows 8のモダンUI環境(すなわちシングルウインドウ環境)においては、表示情報量を増やすか、文字サイズを大きめにしてよりなめらかな表示にするか、という形で、この解像度が生かされる。
ただ、やはり残念に感じたのは、Windows 8の日本語表示クオリティーがさほど高くないことだ。MSゴシック系は相変わらずビットマップフォントを内包しているので、ベクターベースの美しさを生かしにくい。アルファベットであれば文句なく美しいのだが、この辺、フォントレンダラーや使用フォントの面で、マイクロソフトの配慮の薄さを感じる。
現時点でNew XPS 13は特別な存在だが、タブレットが高解像度化していく以上、PCもそれに引きずられるように高解像度化するのは間違いない。PCだけ表示が美しくないままではなんとももったいない。
誤解のないよう書いておくが、ハードウェアとしてのNew XPS 13 プラチナ・フルHD液晶自体は、間違いなくお買い得な製品だ。12万9980円(2013年2月19日現在)でこれだけの性能を備えている製品はそうそうない。フルHDパネルにこだわらなければ、10万円以下で購入できてしまうのだが、ストレージが128GBに減ること、メモリーが4GBに落ちることを考えると、フルHD対応のNew XPS 13 プラチナ・フルHD液晶を選ぶ方が利口だ。だがそれだけに、Windows 8の側の「残念さ」が際立ってしまうのだ。
- お勧めする人
- ・高解像度ディスプレー搭載Ultrabookを求めている人
- ・コストパフォーマンスの良いUltrabookを求めている人
主なスペック | |
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製品名 | New XPS 13 プラチナ・フルHD液晶 |
直販価格 | 12万9980円から(キャンペーン価格/2013年2月19日現在) |
CPU | Intel Core i7-3537U(2GHz) |
メインメモリー | 8GB DDR3L 1600MHz |
ディスプレー(最大解像度) | 13.3型ワイド IPS液晶(1920×1080ドット/輝度350ニット)、Gorilla Glass、LEDバックライト |
グラフィックス機能 | Intel HD Graphics 4000(CPU内蔵) |
ストレージ | 256GB SSD |
光学式ドライブ | — |
通信機能 | 無線LAN(IEEE 802.11a/g/n) |
インターフェース | Mini DisplayPort端子、 USB 3.0端子、USB 3.0端子(Power Share)、Bluetooth 4.0、130万画素ウェブカメラ |
サウンド機能 | 内蔵マイク、ヘッドホン/マイクコンボ端子 |
本体サイズ/重量 | 幅205×奥行き316×高さ6〜18mm/約1.36kg(最小構成時) |
OS | Windows 8(64bit) |
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
近著に
- 「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)
- 「災害時ケータイ&ネット活用BOOK」(共著、朝日新聞出版)
- 「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(エンターブレイン)
- 「リアルタイムレポート デジタル教科書のゆくえ」(TAC出版)
- 「スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場」(アスキー・メディアワークス)
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