年末に28nmプロセスの
Kaveriが登場
Richlandに続くのが、2013年末の出荷を予定しているKaveriだ。CPUコアにSteamroller、GPUコアにGCNを採用し、かつ28nmプロセスを利用して製造することになる。そして、上の画像にもあるようにHSA(Heterogeneous System Architecture)が搭載される。このHSAの機能とは、CPUコアとGPUコアの完全なキャッシュコヒーレンシと、完全な同一メモリー空間の利用、およびIOMMU v2が搭載されることを意味すると思われる。
キャッシュコヒーレンシとはデータの一貫性や整合性のことで、CPUコアとGPUコアで同じデータをキャッシングできることを意味する。これによりOpen CLなどを使った、CPUとGPUの協業がより少ない負荷で可能になる。同一メモリー空間も同じで、CPUとGPUで同じアドレスを利用してプログラムを利用できる。
一方IOMMU v2は、初めて「GPUからページフォールトを発生できる」機能である。通常、CPUでプログラムを動かす時は、処理を進めてゆく過程で「ある仮想アドレスが実際には物理メモリーに割り当てられていない」という状況が発生する。この場合、CPUはページフォールトを発生させ、OSはこれを受けてその仮想アドレスに対応した物理メモリーを割り当て、処理が継続されることになる。
ところがGPUが同じことを実行しようとすると、バスエラーが発生してシステムがクラッシュする。I/Oデバイスは、実際にI/Oを行なう前に物理メモリーが必ず割り当てられている、というのが大原則だったからだ。実際にFile I/OやGPUで画面の描画を行なうケースではこれで問題ないのだが、GPGPUとして使おうとするとかなり厳しい制約になる。これを解決し、GPUなどからページフォールトを発生できるようにしたのが、このIOMMU v2である。
これらHSAの機能を搭載したからといって、すぐに恩恵にあずかれるわけではない。だが、こうした機能を搭載したAPUがないとソフトウェアの普及は見込めないわけで、Kaveriはその第一歩ということになるだろう。
Kaveriが2013年後半まで投入されない理由は、連載180回にも書いたとおり、プロセスの移行問題である。AMDは未だに明確には示していないが、GLOBALFOUNDRIESの28nmに関してはほぼ見切りをつけており、まずはKabiniとTemashがTSMCの28nmで量産開始となり、ついでKaveriがTSMCで量産される。KabiniとTemashは2011年末からTSMCでの量産に向けての物理設計を開始していたから、ほぼ予定通りだ。
一方Kaveriは、Trinityの物理設計が終わった段階からのスタートのため、やはり1年程度かかってしまうのは致し方ないところ。それでも2013年10月までに投入できれば、Trinityからほぼ1年という計算だから、そう悪くはないだろう。
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