アプリ内に2台分のPolysixを内蔵
―― iPad向けのシンセアプリはiMS-20に次いで2作目ですが、これは前作とどう違いますか?
中島 まず大きく違うところは、iMS-20は内蔵するシンセが1台だったんですが、iPolysixでは2台になっています。それからiPolysixは6音ポリのアナログシンセ、iMS-20はモノフォニックというのが大きな違いですね。おのずと作ることのできる曲が違ってくると思います。
福田 そうですね、まずポリフォニックなので。実際、上がってきた曲も全然キャラが違いますよね?
中島 ちょっとポップな感じの曲が多いのかなと思います。パターン数もステップ数も増えているので、その辺の違いもありますよね。パターン数はiMS-20の倍の32、ステップ数は4倍の64になっています。
回路構成のシミュレートでオリジナルと同じ音に
―― 音のキャラクターはどうですか?
中島 もともとMS-20とPolysixはキャラクターが違います。どちらかと言うと、Polysixは柔らかい、温かみのあるパッドサウンドのような、和音を生かした音に長けているかなと思いますね。CMT※1というアナログ回路のモデリング技術を使っていまして、オリジナルを忠実に再現していますから、オリジナルと遜色ない音が出ると思って間違いないです。
―― iMS-20なんかとの音色的な差別化は?
中島 もともと回路構成も違いますし、構造が違うので、それを再現していくことで自然と音の違いは出てくるんですね。
―― ヒアリングではなく、回路構成をシミュレートすることで、実機と同じ音になっていくということですね?
中島 はい、その通りです。
福田 昔のバーチャルアナログは、アウトプットの特性だけを似せるやり方が採られていたんですが、CMTは回路構成をデジタルに置き換えるという作業ですから、そこは全然違います。
―― Polysixは今までにもアプリとして結構出てましたよね。
福田 まず最初にKORG Legacy Collection※2で出しました。その後OASYS※3上で、MS-20とPolysixを再現したんですね。今年になってからは、Polysix for Reason※4というReason用のPlugin。それとこれは研究開発なんですが、Google I/Oという開発者イベントで発表したMiseluさん※5のアプリとしてPolysixを出しています。
―― Miseluはプロトタイプですけど販売予定は?
福田 未定ですね。僕らはGoogle I/Oに出したいということでやったので。それで今のところは終わっています。
※1 Component Modeling Technology: KORG Legacy Collection以降に使われている、KORG独自の電子回路をモデリングする技術。
※2 KORG Legacy Collection: MS-20、Polysix、Mono/PolyなどKORG往年のシンセをソフトウェア化したもの(2004年発売)
※3 OASYS: 現在のKRONOSの前身にあたる、複数のシンセエンジンを搭載したワークステーション(2005年発売)
※4 Polysix for Reason: プロペラヘッド製のバーチャル・スタジオラック。シーケンサーやエフェクターなどのPluginを組み込み、本物同様パッチ操作でシステムの構築や演奏が可能。
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