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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第113回

iPolysix開発者インタビュー前編

あの「Polysix」が30年の時を経てiPadアプリに

2013年02月02日 12時00分更新

文● 四本淑三

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アプリ内に2台分のPolysixを内蔵

―― iPad向けのシンセアプリはiMS-20に次いで2作目ですが、これは前作とどう違いますか?

中島 まず大きく違うところは、iMS-20は内蔵するシンセが1台だったんですが、iPolysixでは2台になっています。それからiPolysixは6音ポリのアナログシンセ、iMS-20はモノフォニックというのが大きな違いですね。おのずと作ることのできる曲が違ってくると思います。

福田 そうですね、まずポリフォニックなので。実際、上がってきた曲も全然キャラが違いますよね?

中島 ちょっとポップな感じの曲が多いのかなと思います。パターン数もステップ数も増えているので、その辺の違いもありますよね。パターン数はiMS-20の倍の32、ステップ数は4倍の64になっています。

2台内蔵されたPolysixには、それぞれ独立した2台のシーケンサー「Polyseq」が与えられている。ピアノロール調のデザインながら、ボタンを模したアナログ時代のステップ・シーケンサー風になっているのが面白い。往年のアナログシーケンサー「SQ-10」を彷彿とさせるような、シーケンスを逆に進めたり、偶数・奇数ステップのみをトリガーするなどの機能もある。これで1小節最大64ステップでパターンを組める

パターンの呼び出し画面。シーケンサー「Polyseq」に打ち込んだ32のパターンを、この画面で呼び出す

パターンを並べて曲に仕上げるソングエディタ。ソングの長さ(並べられるパターンの数)は最大100小節まで

回路構成のシミュレートでオリジナルと同じ音に

―― 音のキャラクターはどうですか?

中島 もともとMS-20とPolysixはキャラクターが違います。どちらかと言うと、Polysixは柔らかい、温かみのあるパッドサウンドのような、和音を生かした音に長けているかなと思いますね。CMT※1というアナログ回路のモデリング技術を使っていまして、オリジナルを忠実に再現していますから、オリジナルと遜色ない音が出ると思って間違いないです。

―― iMS-20なんかとの音色的な差別化は?

中島 もともと回路構成も違いますし、構造が違うので、それを再現していくことで自然と音の違いは出てくるんですね。

―― ヒアリングではなく、回路構成をシミュレートすることで、実機と同じ音になっていくということですね?

中島 はい、その通りです。

福田 昔のバーチャルアナログは、アウトプットの特性だけを似せるやり方が採られていたんですが、CMTは回路構成をデジタルに置き換えるという作業ですから、そこは全然違います。

―― Polysixは今までにもアプリとして結構出てましたよね。

福田 まず最初にKORG Legacy Collection※2で出しました。その後OASYS※3上で、MS-20とPolysixを再現したんですね。今年になってからは、Polysix for Reason※4というReason用のPlugin。それとこれは研究開発なんですが、Google I/Oという開発者イベントで発表したMiseluさん※5のアプリとしてPolysixを出しています。

―― Miseluはプロトタイプですけど販売予定は?

福田 未定ですね。僕らはGoogle I/Oに出したいということでやったので。それで今のところは終わっています。

オリジナルにはないものの、KORGのアプリらしく「KAOSS PAD」を2台搭載。XY方向にシンセサイザーのパラメーターを設定して音色を変化させるだけでなく、なんと指先一本で和音が弾ける。設定したキーとスケールに対応した構成音が出る仕組みで、音を外さない

※1 Component Modeling Technology: KORG Legacy Collection以降に使われている、KORG独自の電子回路をモデリングする技術。

※2 KORG Legacy Collection: MS-20、Polysix、Mono/PolyなどKORG往年のシンセをソフトウェア化したもの(2004年発売)

※3 OASYS: 現在のKRONOSの前身にあたる、複数のシンセエンジンを搭載したワークステーション(2005年発売)

※4 Polysix for Reason: プロペラヘッド製のバーチャル・スタジオラック。シーケンサーやエフェクターなどのPluginを組み込み、本物同様パッチ操作でシステムの構築や演奏が可能。

※5  Miselu: Androidベースの新楽器「Miselu neiro」で動作するPolysixが存在する。まだ筐体、ソフトともにプロトタイプで一般には売られていない。Miselu公式サイトにはKORGの福田さんも登場する。

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