第二に、ThinkPad Tablet 2の専用キーボードは「PCとしてのThinkPad用」の条件が満たされている、ということだ。タブレット用キーボードはタッチ併用前提のものが多いが、これはThinkPadの代名詞でもあるトラックポイントがあり、ごく普通のポインティングデバイスとして使える。画面輝度や音量変更などのショートカットも使える。
トラックポイントとはいえ、ThinkPad用のストロークのあるものとは異なり、ポインター上部で指を滑らせるように使う、光学式の「オプティカル・トラックポイント」だ。「VAIO Duo 11」のスティックポインターに近いもの、と言えばいいだろうか。筆者が触った限りでは、VAIO Duo 11のポインターよりもかなり使いやすかった。「なんとなく引っかかりはあるがトラックポイント的に使える」ように調整されている、と思っていただければいい。Windows 8は意外とタッチが快適だ。タッチで使いつつ「補足的にトラックポイントを使う」と考えると、おおむね満足できるだろう。
第三に、「日本語キーボード」であること。PC用として考えれば当たり前だが、タブレット用キーボードは英語キーボードが多い。これは、iOSにしてもAndroidにしても英語キーボードでの利用が基本なので、英語キーボードのまま出荷される製品が多いためだ。だがThinkPad Tablet 2は「PC」。だから、きちんと日本語キーボードが使える。
タイプ感も若干浅めではあるが、この種のキーボードとしてはかなり良いものだ。配列はサイズの問題からEnterキーなどが小さめになっており、Print Screenキーがないなど、配列に特殊な部分があるが、普通に使う分には問題ないだろう。なおPrint Screenキーがないことをカバーするためでもないのだろうが、標準添付のアプリケーションを使うと、ペンのボタンを使ってスクリーンショットを撮れるようになっている。
このセットでの使い勝手は実に良好だ。セットにするとまさに「軽量パソコン」になる。もちろん、Bluetooth接続である点が弱点ではあるが、特に卓上で使うなら、このセットはもう「タブレット」と思う必要はない、と言ってもいいだろう。
なお当然サポート外だし、すべての機能がすべての環境で働くわけではないが、Bluetooth接続であるため、このキーボードはThinkPad Tablet 2以外の機器でも使えたことをご報告しておく。
パフォーマンスも安定度も良好
発熱も少ない
Windows 8タブレットの良さは、やはり「普通のパソコン」としても使えることだろう。
ThinkPad Tablet 2のWindowsエクスペリエンスインデックスの値は「3.2」。ボトルネックはグラフィックだが、これも製品の性質を考えればこのくらいのもの、と考えるべきだろう。Windows 8スタイルUI上では、この数字以上の快適さを感じる。もちろんこれは、Windows 8スタイルUIがパフォーマンス重視で作られているからだろうが。
では、従来のデスクトップアプリはどうか? こちらも、ほとんど違和感は感じない。もちろん、大規模なアプリを使うと起動が遅いなどの限界はある。動画をエンコードするのも厳しいし、ゲームにも向かない。しかし、一般的なビジネスワーク用アプリであれば、動作速度の問題はないだろう。
ハイパフォーマンス状態になっても発熱が大きくならず、快適さが維持されることもうれしい点だ。本体右上、裏から見るとThinkPadロゴがあるあたりは、常に少々発熱が大きめであるが、この部分はほとんど触らないのでさほど気にならない。他のタブレットと同様、「高速に動くわけではないが常に一定のパフォーマンスで動く」ような感覚だと考えれば、わかりやすいだろうか。
バッテリー駆動時間も優秀だ。バッテリーテストツール「BBench」のテストでは、9時間を切る程度。これはディスプレー輝度を最低にした場合の結果なので、明るくするともう少し短くなるだろう。この数字は他のタブレットとそう大きく異なるものではなく、「1日なら普通に使える」レベルと考えていい。
BBenchによるバッテリー駆動時間テスト | |
---|---|
バランス | |
約8時間48分 |
しかもmicro USBから充電できるので、自由度はこれまでのPC以上に高い。スペック上は5V、2Aの出力で充電できるので、iPadなどに対応している汎用のUSB ACアダプターで、問題なく充電できた。また、サスペンド状態で1日放置しても、電力の消耗はほとんど見られなかった。こういった要素は、他のタブレットでも実現できていることだが、PCとしてみると素晴らしい。本当に「タブレットのような電力消費感覚」で使えるといってよさそうだ。
最後にまとめだ。ThinkPad Tablet 2は、この種のWindowsタブレットの中で、特に完成度が高い製品だと感じる。動作も安定しており、ペンもオプションキーボードも快適だ。新しい要素が多い製品でありながら、「常に思ったように動く」感覚が頼もしい。気にかかったのは、「お手つき誤認」調整くらいだろうか。
後は、これだけよくまとまった製品が、安定して供給されれば万全なのだが。
- お勧めする人
- ・快適なWindowsタブレットを求めている人
- ・ペンとキーボードの併用を検討している人
ThinkPad Tablet 2(367928J)の主な仕様 | |
---|---|
CPU | Atom Z2760(1.5GHz) |
メモリー | 2GB |
グラフィックス | CPU内蔵 |
ディスプレー | 10.1型ワイド 1366×768ドット |
ストレージ | SSD 64GB |
無線通信機能 | IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0 |
インターフェース | USB 2.0×1、mini HDMI出力、micro USB(充電専用)、マイク・ヘッドホン兼用端子 |
サイズ | 幅262.6×奥行き164×高さ9.8mm |
質量 | 約570g |
バッテリー駆動時間 | 約10時間 |
OS | Windows 8 Pro 32bit |
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「災害時ケータイ&ネット活用BOOK」(共著、朝日新聞出版)、「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(エンターブレイン)、「リアルタイムレポート デジタル教科書のゆくえ」(TAC出版)、「スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場」(アスキー・メディアワークス)、「漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)。 最新刊は「ソニーとアップル 2大ブランドの次なるステージ」(朝日新聞出版)。
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