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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第112回

ボカロカルチャーに一石投じるヒッキーPに聞く

2013年01月19日 12時00分更新

文● 四本淑三

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CGMは幻のカルチャー

―― 2年半前に取材させていただきましたが、あれ以降、ボカロPへの取材は滅多にやらなくなりました。商業音源は商業媒体に、それ以外はユーザー発のCGMカルチャーの成り行きに任せるべきではないかということで。

ヒッキー でも、ボーカロイドのCGMって今どこに行ったんだろうというくらい、幻のカルチャーですよね。どこにあるんだみたいな状態ですよ。今ボーカロイドを聴く人の間で、そもそもアンダーグラウンドシーンという考え方がない人が多いです。

―― ものすごく見えにくくなりましたよね。

ヒッキー 小さくてもある程度活発に動いてくれればいいんですけど、本当に無いに等しいというか。もともと好きなことをやろうという気運は、ボカロシーンには強くあったんですけど、今はそういう人が集まる場所がなくて、好きなことをやっているにしても、一人でやっているに過ぎない。シーンがあるという感覚がなくなってしまったんです。ボカロからちょっと離れてMMDの世界になれば、そういう気運もあるんですけど。

―― MMDはなかなかお金にならないけど、音楽はいろんな組織が関わってお金にしやすいシステムができあがっているわけですね。それが目的と動機になると、コミュニティーやネットは拡販のためのツールでしかない。そういう状況で、ヒッキーPのソロアルバムが出るのはすごいことだと思うんですが。

昨年12月に発売されたアルバム「Eutopia」

ヒッキー 単純なことを言うと、レーベルの人が出したかったからです。ワンダーグラウンドミュージックというレーベルに曽根原さんという人がいるんですけど、彼が僕の曲など数曲をレーベルの上の人に聞かせてGINGAレーベルがt立ち上がったというくらい、僕はレーベルの根幹付近にいるらしいんです。

―― 正直言ってレーベルも豪気だなと思うんですが。

ヒッキー 無謀ですよね。僕も最初は売れないからと言って消極的だったんですが、決して拒否していたわけじゃないんです。「この人はどういう意図で、僕にこの話を持ちかけているのか」と、曽根原さんの気持ちをより詳しく知りたかったんです。そしたら「俺が好きだからとにかくやりたいんだ」とずっと一点張りで。リスクは多大だろうに、そこまで言ってくれることに感動してお話を受けました。それに加えて、商業優先でもないけど、アンダーグラウンドに甘んじるでもない、そういった理念を元に活動しているということをおっしゃっていて、それで僕を誘うんだから、こりゃいよいよ変な人だとワクワクしちゃって。

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