CGMは幻のカルチャー
―― 2年半前に取材させていただきましたが、あれ以降、ボカロPへの取材は滅多にやらなくなりました。商業音源は商業媒体に、それ以外はユーザー発のCGMカルチャーの成り行きに任せるべきではないかということで。
ヒッキー でも、ボーカロイドのCGMって今どこに行ったんだろうというくらい、幻のカルチャーですよね。どこにあるんだみたいな状態ですよ。今ボーカロイドを聴く人の間で、そもそもアンダーグラウンドシーンという考え方がない人が多いです。
―― ものすごく見えにくくなりましたよね。
ヒッキー 小さくてもある程度活発に動いてくれればいいんですけど、本当に無いに等しいというか。もともと好きなことをやろうという気運は、ボカロシーンには強くあったんですけど、今はそういう人が集まる場所がなくて、好きなことをやっているにしても、一人でやっているに過ぎない。シーンがあるという感覚がなくなってしまったんです。ボカロからちょっと離れてMMDの世界になれば、そういう気運もあるんですけど。
―― MMDはなかなかお金にならないけど、音楽はいろんな組織が関わってお金にしやすいシステムができあがっているわけですね。それが目的と動機になると、コミュニティーやネットは拡販のためのツールでしかない。そういう状況で、ヒッキーPのソロアルバムが出るのはすごいことだと思うんですが。
ヒッキー 単純なことを言うと、レーベルの人が出したかったからです。ワンダーグラウンドミュージックというレーベルに曽根原さんという人がいるんですけど、彼が僕の曲など数曲をレーベルの上の人に聞かせてGINGAレーベルがt立ち上がったというくらい、僕はレーベルの根幹付近にいるらしいんです。
―― 正直言ってレーベルも豪気だなと思うんですが。
ヒッキー 無謀ですよね。僕も最初は売れないからと言って消極的だったんですが、決して拒否していたわけじゃないんです。「この人はどういう意図で、僕にこの話を持ちかけているのか」と、曽根原さんの気持ちをより詳しく知りたかったんです。そしたら「俺が好きだからとにかくやりたいんだ」とずっと一点張りで。リスクは多大だろうに、そこまで言ってくれることに感動してお話を受けました。それに加えて、商業優先でもないけど、アンダーグラウンドに甘んじるでもない、そういった理念を元に活動しているということをおっしゃっていて、それで僕を誘うんだから、こりゃいよいよ変な人だとワクワクしちゃって。
この連載の記事
-
第164回
トピックス
より真空管らしい音になるーーNutubeの特性と開発者の制御に迫る -
第163回
トピックス
超小型ヘッドアンプ「MV50」のCLEANは21世紀の再発明だった -
第162回
トピックス
欲しい音を出すため――極小ヘッドアンプ「MV50」音色設定に見る秘密 -
第161回
トピックス
最大出力50Wのヘッドアンプ「MV50」は自宅やバンドで使えるのか? -
第160回
トピックス
新型真空管「Nutube」搭載ヘッドアンプのサウンドはなにが違う? -
第159回
トピックス
開発で大喧嘩、新型真空管「Nutube」搭載超小型ヘッドアンプ「MV50」のこだわりを聞く -
第158回
トピックス
唯一無二の音、日本人製作家の最高ギターを販売店はどう見る? -
第157回
トピックス
「レッド・スペシャルにないものを」日本人製作家が作った最高のギター -
第156回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターを日本人製作家が作るまで -
第155回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターは常識破りの連続だった -
第154回
トピックス
てあしくちびるは日本の音楽シーンを打破する先端的ポップだ - この連載の一覧へ