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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第186回

CPU黒歴史 対Opteronで登板も半年で2軍落ちしたPaxville

2013年01月21日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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2001~2006年当時のサーバー向けCPUロードマップ

 ではなぜPaxvilleが黒歴史なのか? それはPaxvilleがただのワンポイントリリーフで終ってしまったためだ。先程のCPUロードマップ図をもう一度見ていただきたい。Paxville-MP(紫色の製品)がリリースされた翌月の2006年1月には、「CederMill」(図下、オレンジ色の製品)が投入されている。

 CederMillはインテルとしては初の、65nmプロセスを使った製品だ。一方で90nmプロセスを使わざるを得なかったPaxvilleは、Xeon 2.8GHzですらTDPは135W。Xeon MP向けのXeon 7000シリーズになると、動作周波数が3GHzどまりなのにTDPは165Wに達している。ちなみにSmithfieldのTDPは、2.8GHzの「Pentium D 820」で95W。3.2GHz動作の「Pentium Extreme Edition 840」ですら、130Wに抑えられている。いかにPaxvilleの消費電力が高いかがわかる。

 さらに追い討ちをかけるように、インテルは急速にプロセッサーの代替を開始する。CederMillと同時に、これをMCMでデュアル化した「Presler」が市場投入され、これをXeon DPに向けた「Dempsy」が2006年6月に登場する。さらに、CederMillベースでネイティブデュアルコア化して、さらに最大16MBもの3次キャッシュを搭載した「Tulsa」が、2006年8月に投入された。

 このTulsaは、Paxvilleを65nmに移行させて、さらに3次キャッシュを加えたような構成である。だが、PaxvilleではCPUコアや2次キャッシュにほとんど手をつけないままだったのに対して、Tulsaは3次キャッシュ向けのダイレクトリンクを追加したり、内部のトランジスター構成を見直して省電力化を進めたりといった手間をかけていた。

 その結果、ハイエンドの「Xeon 7150N」(3.5GHz、667MHz FSB、16MB 3次キャッシュ)ですら、TDPは150Wに抑えられている。こうなると、どう考えてもPaxvilleを製品展開する意味はない。結局Paxvilleは、わずか7ヵ月でハイエンド向け製品の地位から滑り落ち、Tulsaにその座を譲ることになった。

Core 2世代のWoodcrest登場で立場もなし

WoodcrestことXeon 5100シリーズ

 しかもTulsaが登場した2006年8月は、すでにCore 2ベースの「Woodcrest」コアを使った「Xeon 5100」「Xeon 5300」シリーズが出荷開始されていた。2007年9月には、これをXeon MP向けとした「Tigerton」ベースの「Xeon 7200/7300」が投入されている。

 Tigertonの投入が遅れたのは、チップセット側の対応が必要だったためである。Tigerton自身はデュアルコアの「Tigerton-DC」と、これを2つ搭載してMCM式に1チップ化した「Tigerton-QC」がある。当然Tigerton-QCでは、先の図4の問題が再現することになる。

 これに対応するため、インテルは2007年9月に、FSBを4本備えたさらに大規模になった「Intel 7300」チップセットを投入。E8500プラットフォームを置き換えてしまった。つまり2007年には、MCM構成であること自体は、デメリットにならなくなったわけだ。こうなると、ますますPaxvilleのはたした功績は薄れ行くばかりだ。

 ものすごく前向きに考えれば、Paxvilleの共有型BIUは、その後のTulsaの開発に少しは役立ったかもしれない。あるいは、とりあえず4プロセッサー以上のサーバー市場で、デュアルコアOpteronに対抗する製品を2005年中に投入できた、という功績も認められるかもしれない(デュアルコアOpteronの投入は2005年4月)。そうは言っても、Paxvilleの功績はせいぜいその程度。それほど動作周波数が高くないわりに消費電力は高すぎるCPU、というだけでしかないPaxvilleは、早々に市場から消えることになった。

 サーバー向けということもあってか供給期間は長く、インテルの製品情報サイト「ark.intel.com」で見ると関連リンク、Paxvilleはいまだに「Launched」(出荷中)になっている。ただし、すでにRecommended Customer Price(希望小売価格)は表示されていない。後継のTulsaが、いまだに希望小売価格が示されているものがあるのと比べれば(関連リンク)、極めて対照的である。

 サーバー向けとしては初のネイティブデュアルコアCPUで、しかも製造にずいぶんと手間暇をかけたにも関わらず、顧客はおろかインテル自身からもほとんど顧みられないかわいそうなPaxville。これまでCPU黒歴史で取り上げたCPUたちと毛色は違うが、表の歴史から無視されているという意味では、黒歴史入りするCPUだと思う。

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