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クラウド化しない大企業は消える

「4Kバブル」って本当? CES報道におぼえた違和感

2013年02月13日 16時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/アスキークラウド編集部

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企業の生き残りはクラウドにかかっている
「ガラパゴス家電」ではなく「バルス」が成功の鍵

 現在、時代の中心にいるのは移り変わりの速いWebサービスだ。製造業はモノではなく、彼らのサービスを成立させるシステムづくりにシフトしていく必要がある。タイミングを見誤れば、メーカーは顧客の求めるものからどんどん遠ざかっていってしまう。

 その動向を敏感に察知しているのは、韓国のサムスンだろう。NVIDIAとおなじく、サムスン自身がスマートフォン用の半導体を開発しており、CESでは最新型のプロセッサー「Exynos 5 Octa」を発表した。また、クラウドサービスを展開するためのサーバーに必要な省エネメモリー「グリーン・メモリー」も売り出している。

 彼らの製品に際立ったオリジナリティーがあるかとか、Evernoteに書きこめる冷蔵庫が大ヒットするのかといった疑問はさておき、サムスンは2年以上も前からスマート家電に力を入れてきた。時流に乗ろうとしていることは間違いない。

サムスンはスマートフォン向けのプロセッサー「Exynos」シリーズをARM社と組んで独自開発。またクラウドサーバー向けの「グリーン・メモリー」という省エネ技術も売り出している

基調講演にはARM社のウォーレン・イーストCEO(左)、マイクロソフト最高技術戦略責任者エリック・ルダー氏(右)が登場。IT業界の雄を次々に呼びこみ、記者たちの体温が0.6℃程度上昇した

 ところが、日本の報道を見ていると「4Kバブル」「日本とアジア市場のテレビ開発競争が激化」といった家電メインの記事ばかり。もちろん製品技術がすごいことは分かるが、CESの現場で感じた空気とは違っていた。

 日本にも製品のサービス化を打ち出している企業はあるが、いまだに自分たちが開発した製品をつなぐ「リンク」が中心のようにも見える。クラウドの主役は世界中にあふれるWebサービス。大企業が新しいことをしようとするときは「既存部門を活かすものでなければ」と思いがちだが、製品の殻に閉じこもった「ガラパゴス家電」ではもう戦えない。

 一方で、日本のWebユーザーたちの発想力にはまだ勝ち目があるように思う。

 テレビで映画「天空の城ラピュタ」を見ながら、スマートフォンでTwitterに滅びの呪文「バルス!」と書き込もうという天才的なアイデアを自然に思いつき、数万人をあっさり動かしてしまえるのは日本人だけだろう。そうした「ガラパゴスクラウド」を企業戦略に取り入れ、世界市場をねらっていくことで、新しいCESの主役になっていってほしいと思えた。

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