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前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック” 第9回

ツルピカじゃダメ 人気SFの宇宙船が汚れてる理由

2013年01月25日 09時00分更新

文● 前田知洋

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人に触れられるノイズから生まれた形

 プロダクトデザイナーの深澤直人さんによる「2.5R」というデザイン群がある。昔の木製の家具や柱がかんなで少し角を落とされたあと、人に触れられ、使い込まれて出来た自然の丸みを再現したものだ。

 寺院の柱や、学校で慣れ親しんだ勉強机や行きつけの食堂のカウンターのように、なんとなく触ると落ち着く柔らかい角のサイズ。それが「2.5ミリR」であることを深澤さんは発見した。偶然に触られるというノイズで僅かに変形し、その結果の形を人間は心地よく感じる。「2.5R」のシリーズは大ヒットをし、グッドデザイン賞を受賞した。

ノイズを上手く使うポイント

 こうしたノイズを上手く使うと、「親近感」「ノスタルジック(懐かしさ)」「リアリティ」を持ってもらえる。

ノイズを上手く使うポイントは以下の通り。

●ノイズの量のバランスに注意する
甘いものに少量の塩を加えると、甘みが増す。しかし、塩を入れすぎると奇妙な味になってしまうように、人が気がつくか気がつかない程度のバランスにすることが大切。

●人為的なものであること
ダメージ加工のジーンズが本当に汚れていては商品にならない。自分の失敗や過失の言い訳としてノイズを使わない。

●本質を引き立たせるノイズを選ぶ
たんに異物を混ぜれば、本質が引き立つわけではない。本質を引き立たせるノイズを発見するには、「どんな環境で、何が起きているかを観察、想定すること」が大切になる。

 人間は音が全くしない環境よりも、僅かな音、雨や風の音などがあったほうが熟睡できるといわれている。ノイズを除去することもときには大切。しかし、ノイズを上手く混ぜることで魅力が増す。手前味噌かもしれないけれど、「少しダメなところがあったほうが魅力的」なのは、人間も同じだと筆者は思っている。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす魔法のことば』(日本実業社出版)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、(株)ビジスパからメルマガ「Magical Branding-セルフブランド活用法-」を配信中。

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