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Twitter「実況民」の最強コンテンツは「プリキュア!」と判明!

2013年01月21日 12時00分更新

文● 美和正臣 撮影●小林伸

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「みるぞう」のデータ分析の先にあるものとは何か

――「みるぞう」は面白いですね。こういうサービスがどんどん増えると楽しくなってきますよね。これを元に次に作りたいものってありますか?

これを作ったあとに、世の中的にもテレビを観ながらツイートするという「ソーシャルテレビ」というキーワードが注目されました。とくに五輪のときに「ソーシャル五輪」と言われて、すごく注目がありましたと。これと同期してテレビ局の方もそっち方面に前のめりになっていて、われわれも「せっかくだからもっとここを追求しようよ」とは思っているんです。全然違うことをやろうかというよりは、この分野で次は何ができるのかなということを考えています。

Twitterの分析ではツイッターとビデオリサーチが提携して、ツイート量で番組の指標を出そうということをやったりとか、先日はアメリカでニールセンとツイッターが提携したという話があったりします。そこは凄くエポックメイキングな話だと思っています。例えばビデオリサーチはある意味、視聴率の価値を死守する立場だったじゃないですか。そこが違う指標に手を出す。多分われわれがツイート量を集計して「これを指標にしましょう」と言っても多分誰も聞かないのでしょうけど、ビデオリサーチが「これが指標です」と言うと、ある意味みんなそれを重視せざるを得ないという状況ができると思います。あちらにやられてしまったから苦々しく思っているかというとむしろ逆で、そういう価値観が出てくるとその中でそこで足らないことをどうやって埋めていくかというところに意識が行くと思うんですね。現状ビデオリサーチとツイッターがやっている集計って、放送局のハッシュタグで集めたツイート量で計りますという形なんですが、われわれはこうやって1年くらいやってきていろいろなツイートを見てくると、単純な量はあまり意味をなさないなと感じるんです。

先ほども言ったようにアニメが多くなる可能性がある。番組のハッシュタグと放送局のハッシュタグで集めると数字は上がりますけど、番組のハッシュタグを抜くと多分アニメってもっと下がるんです。基準の違いで大きく変わってしまう指標って「何の指標だっけ?」という感じじゃないですか。そこはどうしたらより客観的なのかとか、どうやると何を表す指標なのかという、もっと意味的なこととかを突っ込んでいかないと本当に有効な指標は出てこない。だから今ビデオリサーチとツイッターがやり始めたことって、本当に最初の一歩というか、ここからさらにどう意味のある情報にしていくのかということをみんなが試行錯誤している段階だと思っています。われわれもその中でいろいろやってきた中で見えてきたことを活かして、「こういう風にしたらもっと意味があるのじゃない?」というところを出していけたらいいなと思います。

――視聴率の関連だけではなく、つぶやきの量で関連商品がどのくらい売れるのかが分かると嬉しいですよね。

前に聞いた話だと、あるテレビ局さんがそういう分析を一度やられたそうで、ざっくり言ってソーシャル参加量と関連商品の売り上げは相関があると結論づけているみたいですね。

――ちなみに実況民のツイートをポジ・ネガ(PN)判定するとどんな感じなんですか?

ツイッターの場合はとくに、単文すぎて判定できないものが多い可能性が高いと考えています。最終的には人の目で判定してある程度正解率を出せると思うのですが、例えば「キモ!」と誰かが言っているとして、それは番組に対して嫌悪感を示しているのか、出てきたものが凄く気持ち悪いとすごく前のめりに反応しているから「キモ!」と言っているのかって、判断が付かないのですよね。ツイートの分析というと、数の次に出てくるのがポジ・ネガなんですけど、実際にはあまり意味ある結論はでないのかなと思っています。そもそも文脈立てて書かないじゃないですか。

――感情一発で書いていますもんね。実況ですし。なんか「いいね」「わるいね」ボタンがツイッターについていると一番なんですけどね。

そうですね。あと実際にツイートを見ていると、基本的にテレビを観ながらつぶやく人ってポジティブな人が多いですよね。2chの実況板をみると、評価がシビアで、かなり文化が違うなと思っていて、ツイッターの方はほぼポジティブです。

――ネガティブになるのはサッカーとかスポーツ番組くらいですか。

それも番組に対する感情移入度でいうと、ポジティブだと思うんですよね。本当に番組に対してネガティブというのは、前にある番組でものすごい事故を起こしたんですよね。映像が完全におかしくなって放送として成立しないような状態になって、「ああ、放送事故だな」「録画しておけばよかった」みたいな、珍しいものを見たという意味で凄く盛り上がったんですけど、そのケースくらいですかね。大抵は、何かしらその番組に対して思い入れて、そのことを表現しているという、割と素直なケースが多いですね。

――そうするとツイート数が多い番組というのは熱烈なファンがついていて、愛しているからもう少しやり方を変えるとお金に変わる可能性が高いと考えられますか?

そうですね、ツイート量はエンゲージメント度合いを表しているんじゃないかという解釈はあるとは思っていて、視聴率と関係なくツイートされる番組がありますけど、そういうものはエンゲージメント度合いが高いものだろうと、広告価値が高いだろうと言えるでしょう。でも最近思っているのは、さっきの「踊る大捜査線」でもあったように番組側が煽ってしまうと上がってしまう数字なんですよね。ランキングが1位になってしまうくらい操作できてしまう数字なので、そこをもって何かを表せる指標と言えるかというと、若干怪しいなと思い始めているところです。

――テレビ各局にはハッシュタグ以外の宣伝はダメとか、プロデューサーが実況するのはダメとかいうようなことをやれば、大体ツイート量で関連商品の売り上げが分かるようになってくる可能性はありそうですね。

ええ。どちらかというとツイートなり何なり、視聴者参加を番組側が仕掛けると視聴率が上がるというよりも、その番組を見るという体験が単なるボケッとテレビを観ているだけではない、プラスアルファの何か深化した視聴体験になって、それをみんなが面白がって、結果として視聴率が伸びたりとか、そういうことのツールとしてソーシャルをどう使えるのかという方が意味としてはアリかなとは思います。

あとスポンサーさんの立場で言うと、1つはCMに対してどれくらい反応しているのかというのは知りたいところだと思うのでしょう。単純にCMに関するつぶやきを計測する手段はなくはないのですけど、実際にそんなには多くはないのと、ネタ的に弄りやすいものにみんなが反応してしまうという問題があります。

どちらかというとテレビを見ながらこういう「みるぞう」のようなアプリを使っていて、TVCMが放送された瞬間にピッと押したら何か情報が出るとか、そこの導線が繋がるとかそういうのがあれば、「あ、このCMに反応してくれる人はこれくらいいた」ということが分かるようになる。アプリとかがそういう風に段々と進化していくと、スポンサーさんにとってこの番組は本当に価値があったのかどうかということが「見える化」してくるのかなとは思いますね。

――そうですね。でもそういう風にピンポイントで繋がるようにするのは凄く大変ですよね。

アメリカだと音声同期の技術とかがかなりもてはやされています。放送している映像が今何のCMか何の番組かというのを音声で判定して、今この人は何の番組を見ているというものから関連した情報を出すという、その部分がかなりドル箱の1つと見なされています。

――流れている音声から判断させるわけですか?

端末が勝手に判断して今流れている映像に関連したクーポンとかを表示するという形ですね。Shazamという曲を聞かせると何の曲かを教えてくれるソフトがありますが、その技術を使ってそういう方に展開しています。Shazam以外にもいくつかありますし、日本でも画面同期の研究をいくつかの企業が進めています。

――でもそれ、表示されるコンテンツを作る方はたいへんですよね。

そうですね。結局、映像や声に信号を埋め込むというパターンが基本的に多いですね。最終的には広告代理店なり、テレビ局なりがその座組に乗っかっていないと、実現できないじゃないですか。現状はまだそこまで広告代理店さんとかは動いてはいません。準備はいろいろしているようですけど。

――信号というのは音声信号を入れるわけですか?

音声同期だと音声信号ですね。画面パターンですと画面の中に人の目にはほとんどわからない信号が埋め込んであって、それで同期をします。信号を埋めないパターンもあるのですけど、それはそれで精度の問題がありますから。映像と同期して関連広告を出すというのは、多分こういうソーシャルテレビで何かお金にならないのかと思っている人間の中では1つの稼ぎどころと考えられています。

――なるほど、広告とソーシャルメディア、テレビが融合して、より戦略的な商業活動ができるようになれば面白い展開が見え始めるかもしれませんね。

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