このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

モバイル通信はアマゾンの奥地の教育と経済も活性化させる

2013年01月04日 12時00分更新

文● 末岡洋子 写真提供●Ericsson

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

学校にネットがやってきた!

 次に訪れたのは、サンタレンからタバジョース川を4時間ほど南下したスルアッカという集落だ。約120世帯/500人が住む小さなコミュニティーで、サンタレンに行く公共交通手段は週に2回のボートのみ。隔離された集落といってもよいだろう。

 EricssonとVivoはこのスルアッカを、アマゾンのモバイルネットワーク整備を目指すプロジェクト「Amazon Connection」のもとで、2番目に3Gエリア化した。集落の外れに設置したサイトは同社のマイクロ波伝送装置「Mini-Link」を利用してサンタレンにあるバックボーンに接続する。

冒頭写真の基地局横に設置されたソーラーパネル

 電力供給すらほとんどなかったこともあり、基地局の横にソーラーパネルも設置した。このソーラーパネルは、基地局だけではなく、近くにある学校にも電力を供給する。学校はEricssonが展開する教育プロジェクト「Connect to Learn」の舞台となっており、5台のPCを利用して、インターネットを利用した教育実験が始まっている。

 この学校で2012年6月にスタートしたConnect to Learnは、ネットワークの力を教育に活用するもので、デジタルリテラシーやスキルの改善、ネットワークを利用したコラボレーションなどを目的としている。

学校の様子。Skypeが人気のようだった。PCは5台でスタート、少しずつ増やしていくという

 現在行なわれているのは、初期段階である教師側のトレーニングで、生徒向けの正式なカリキュラムとしてはまだ導入されていない。だが、生徒は1日1時間の自由時間にコンピュータのある部屋に入室でき、Skypeを利用した通信、Wikipedia、Facebookなどソーシャルメディアなどを利用することができる。Ericssonがリオデジャネイロ郊外にあるスラム(ファベーラ)のコミュニティーセンターで展開するConnect to Learnプロジェクトとも連携しており、双方のボランティアや生徒同士が教え合うなどのコラボレーションも進みはじめたという。

 この学校で18年間教壇に立つ女性教師によると、これまでは学校に来なかった生徒が、コンピューターに触れるのを楽しみに学校に来るようになり通学率がアップするなどの変化がすでに見られるとのことだ。今後は教師が欠席した際の自己学習にも利用していきたいという。また、テレビは一方通行であるのに対し、インターネットは双方向である点を評価する。

 現在、スルアッカの子どもたちがこの学校で受けられるのは基礎教育のみで、日本の高校にあたる14歳以上向けの中等教育はサンタレンまで行かなければ受けられない。今後はこのような高等教育も地元で行ないたい意向で、モバイルの力を活用できないかと考えているようだ。スルアッカには学校のほかにも、地域のコミュニティーセンターにサイバーカフェができており、成人女性がコンピュータの使い方を学習する姿がみられた。

 Ericssonによると、2009年にAmazon Connectionプロジェクトのもとで最初に3G基地局を設置したベルテラでは地域取引が74%アップするなど、モバイルは経済発展に大きく寄与しているという。ベルテラでは周辺のコミュニティーもあわせて約1万6000人以上の人々が音声とデータ通信を利用しており、ブロガーも生まれた。長年会っていないという親戚が数十年ぶりに話をしたなどの例のほか、知識や教育への関心が高まり、遠隔教育を利用してスキルを身につけようという人が出てきていることがアンケートからわかったと報告している。

スルアッカはタバジョース川西岸にある集落の1つだ。ベルテラは対岸となる

 モバイル通信のメリットは人によりさまざまだが、これらの地域の人々にとってモバイルは単なる通信や利便性以上の意味を持つ。教育や健康の改善、地元経済の発展――アマゾン川流域の人々にとってモバイル通信は、生活水準アップになくてはならない技術になりつつある。


■関連サイト

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン