UEIの秘策「MOON」はタブレット
遠藤 グーグルのウェアラブルの「Project Glass」ってみんなの反応がもうひとつで焦ってるんですかね? 今度は、腕時計をやるという噂がありますね。
清水 早くメガネ出してほしい。
増井 別にグーグルじゃなくてもいっぱいあるじゃないですか、メガネ型のヘッドマウントディスプレイ。かけたことあります?
遠藤 やたらかけましたよ。
増井 めっちゃ使いにくいでしょ。
清水 かけたんですか?
増井 そりゃいろいろ試してますけどね。
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遠藤 映画の「マイノリティー・リポート」でもつけてましたよね。あれは網膜走査型ディスプレイ(RSD:Retinal Scanning Display)かもしれないけど。研究機関や企業と未来考証をやった映画だから根拠があるんですよ。2054年というような設定なんですけど、なんと携帯電話が出てこない。
清水 いまのイメージのモバイルは2054年にはないと思いますよ。つまり、論文の話に戻すと、本当に便利なものでも目先の新規性を達成しないと、学者業界では生きていくのは難しいという話ですね。
増井 でもそれが自分のとこだけかと思ったら、全然違うITの業界でも一緒らしい。データーベース業界でも同じことをいってた。だからみんなARとか全然新しい方面に行ってるわけですね。
遠藤 ARね。
増井 例えばの話ね。おれはインターフェース系の新しいのがあるとしたら、それは実世界系、ユビキタス系だといってるんだけどさ。なんかみんな言ってるからそんなにインパクトないわけですね。
遠藤 要は全世界プログラミングというのは、実世界に繰り出してプログラミングしましょうという?
増井 だからパソコンはないですよね? 電源もないかもしれない。そんな部屋でどうやってウェブ検索するかっていう。
遠藤 どうやるんですか?
増井 それを考えているっていう。「マイノリティ・レポート」の話が出たけど、目の前に検索結果が出てほしいじゃないですか。その方法を探り出してるんですね。
清水 それは「MOON」(enchant MOON)ですね。
増井 え、そうなの?
遠藤 MOONって「Google NOW」みたいなもんなの?
※ Google Now Android 4.1で搭載したパーソナルアシスタント機能。ウェブ履歴やカレンダーなどをもとに、ユーザーが検索しなくても役立つ情報を表示してくれる
清水 なんでGoogle NOWって思っちゃうの。
遠藤 今グーグルが必死にやってることって、アルバート=ラズロ・バラバシ の「バースト! 人間行動を支配するパターン」の世界なんじゃないですかね? 人間の行動パターンは予測できるって言う話なんですけど、グーグルはいままでのことに関しては検索できるようにしたから、あと残っているのはこれから起こること、人の先を読んで予測することなんじゃないかって。
Google NOWって、ある意味そういうことですよね。予測できてどんどん出てくるということは、入力手段のないようなところでも検索結果が出せることになるじゃないですか。MOONは違うんだ。
清水 MOONは、今の増井さんの話で行くと、全世界コンピューティングをやるとして、もちろん今はまだ端末が必要じゃないですか。実世界コンピューターが実現する時代のコンピューターの形を実験的に実装する形みたいなものです。
遠藤 どういうこと?
清水 まぁそれはちょっとまだ言えないんだけど。
遠藤 現状は、実世界コンピューティングというところまで形になってないんだけど、そのソフトウェア的なことが入ってるっていうこと?
清水 そうそう。だから実世界コンピューティングを実現するために、いくつかのものと分かれなきゃいけないわけですよ。どう分かれていくのかが、これからの僕らの歴史はそうなっていかなきゃいけない。でもこれは、MOONと関係ないけど、AR眼鏡の問題点って、入力装置がないことなんですよね。
遠藤 頭部でできることはしれている。
清水 目玉の動きを読み取る「アイボールトラック入力」をやろうとすると、疲れてできない訳です。
遠藤 それは意識を持ってやろうとしてるから疲れるわけであって、コンピューターが人の動きを読み取ってくれれば解決できる。
清水 それは高度すぎるから脇においておいて、たとえば、エプソンから去年でたAndroid内蔵ヘッドマウントディスプレー(関連記事)とか、本体の方にトラックパッドが付いてるんだよね。その煮え切らない感じがあるじゃないですか。
増井 MOONだったらそれは解決するの?
清水 いや全然解決しないけどね。MOONはタブレットなんですよ。
遠藤 あ、タブレットなんだ。
清水 別にハードウェア的には珍しいものではない。そのMOONを通じて、ものづくりはすごく大変だということが分かったわけです。
遠藤 それで、ハードを作るために深センに何度もスタッフが行ったり。
清水 そうそう。大変だなということが分かった。だから僕らが得意とするものはハードじゃないんだなってのを痛感しました。モノでは戦えない。日本のモノづくりは確かにすごいけど、職人がハンダ付けして量産したものは「それ何百万円よ?」という世界なわけです。だから僕ははっきり割り切ってるのは、製造は中国じゃなくてどこでもよくて、設計は日本の東京でやらないと意味がないんじゃないかと思っている。