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遅すぎる日本のスマホサイトの原因を探る (2/4)

2013年01月08日 11時00分更新

文●竹洞 陽一郎/Keynote Systems

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サイトの真の姿を見る

 トップページの表示にかかる平均時間は、Amazon、フェリシモ、イトーヨーカドー以外は、10秒以上かかっているのがわかります。しかも半数以上は20秒を超えており、35秒〜77秒というサイトすらあります。稼働率が100%なのは18社中7社だけです。ただし、サイトの真の姿を見るには、正規分布図(distribution)や柱状図(histogram)、箱ひげ図(boxplot)でデータ表示し、分析する必要があります。スマートフォンサイトのパフォーマンス(表示速度)を見て「自分のスマートフォンで見ていると、もっと速い」という担当者がいるのは、データを平均値だけで見ているからです。

 試しに、最速の平均値5.783秒でトップページを表示しているAmazonのデータを柱状図で見てみましょう。

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Amazonスマートフォンサイト トップページ パフォーマンス

 Y軸のfrequencyは、計測してその値になった回数を表します。X軸のPERFORMANCEは10秒刻みの表示時間です。0〜5秒が350回以上、5〜10秒が250回以上ある一方で、10秒以上の計測回数は少なく、おおむね10秒以内に表示できていることがわかります。

 次に、平均値が52.855秒のディノスの柱状図(histogram)を見てみましょう。

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ディノススマートフォンサイト トップページ パフォーマンス

 ディノスの場合、20〜30秒の120回以上がもっとも多いとわかる一方で、トップページの表示に50〜100秒かかることが多いことがわかります。つまり、担当者の認識と現実にギャップがあるのは、定常的にパフォーマンスを計測していないのが原因です。

 柱状図で見ると、平均値だけ把握しても意味がなく、定常的に計測することの重要性がわかります。担当者は、たまたまスピードが速いときにサイトを見て「うちのサイトは速い」と認識し、遅くても「電波の繋がりが悪い」で済ましてしまい、「たまたま速い」のか「だいたい遅い」のかを認識する機会が少ないのです。

 次に、表示速度が他のサイトと比べて速いのか遅いのかを比較するために、ECトップ20のスマートフォンサイトのパフォーマンスを箱ひげ図で表示してみます。

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ECトップ20 スマートフォンサイト パフォーマンス

 箱ひげ図でパフォーマンスを見ると、データのばらつき具合から、その会社のサイトがどれだけ安定して配信しているかがわかります。特に、最小値から箱の左側の縦線(全体の観測値の25%の個数が含まれる範囲)と箱の長さ(中央値から左右に50%の個数が含まれる範囲)に注目してください。

 速く安定して配信しているサイトは、最小値から箱の右側の縦線までの範囲が狭くなります。携帯網の特性上、どうしても混雑時のパケットドロップに影響を受けて多大な遅延が発生してしまうので、すべてのサイトで箱の右側の縦線から最大値までの間は長くなる傾向があります。

 箱ひげ図で他のサイトとパフォーマンス状況を見比べて、自社サイトを定量的に分析すると、よいサイトか悪いサイトかを客観的に判断できます。さらに、よいサイトは「稼ぐ」能力にも直結していることがわかります。

 たとえばAmazonは、最小値から箱の右側の縦線の範囲が非常に狭く、左側に寄っていて、非常に安定して高速に配信しているとわかります。「月刊ネット販売」2012年10月号によると、Amazonは昨年のモバイル端末経由での売り上げが585億円(2011年)、2012年は960億円と64%の増加です。日本のECサイトで、モバイル端末経由での売上上昇率をこれだけ記録している企業は他にはありません。

 モバイル端末経由でのECの売上は世界的に毎年倍増しています。成功企業の強さの源泉のひとつは、やはりパフォーマンスの高さです。以下の表は、Keynote Systemsが毎月調べているアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、日本でのスマートフォンのECサイト パフォーマンス 平均値ランキングのです(2012年12月9日発表分)。9位までのサイトは、読み込みが10秒以下というところに注目してください。

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世界のスマートフォンECサイト パフォーマンス 平均値ランキング

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