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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第107回

Windows 8とiPadがもたらす変化 2012年のモバイルPC総集編

2012年12月27日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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Windows 8発売と同時に出荷された「Microsoft Surface」。Windows RTのリファレンスマシンとしてふさわしい製品だが、肝心のWindows RTがまだ魅力不足

 他方で、Windows 8スタイルUIの緩やかな離陸(正直まだ滑走中だと思う)の割を食っているのが、Windows RTだ。Windows RTは、非力なARM系CPU向けに改めてポーティングされたとは思えないほど、快適に動作する「Windows」となっている。だがもちろん、CPUアーキテクチャーが異なるのでx86系のWindowsのために作られたアプリケーションは動作しない。

 Office 2013はあるし(マクロなどの機能はないが)、Windowsストアアプリも動作する。だからWindows RTの実用性はある程度担保される……という計算だったはずだ。事実、Officeアプリを中心に使うなら実用性は高いし、ARMアーキテクチャーならではのバッテリー駆動時間も魅力だ。しかし、PCはOfficeアプリだけで済む環境ではない。Windows 8スタイルUIがその実力を発揮できていない以上、Windows RTの魅力も限定的なものになる。

変形機構を備えたNECパーソナルのWindows RTマシン「LaVie Y」。日本で手軽に手に入る数少ないWindows RTマシンである

 日本では発売されていないものの、海外では登場しているマイクロソフトの「Surface」も、ハードウエアの完成度はきわめて高く、十分に所有感のある製品であるだけに、その点を考えるともったいない。

 その一方で、ダークホース的に飛び出してきたのが「Clover Trail」こと、「Atom Z2760」を採用したWindows 8タブレット群だ。秋頃より、ハードメーカー筋から、「Windows RTに対する不安」が聞こえてくる一方で(出来に対するものではなく市場性についてだ)、Clover Trailを見直す声も聞こえてきていた。実際に出た製品は、確かに「Atom=もっさりで割り切らないと使えない」という風評を、吹き飛ばすに足る出来映えだった。

「ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J」。Clover Trailの登場で、Windows 8タブレットもARMタブレットと戦えるようになるか?

 もちろんCore iプロセッサーのように速くはないが、それなりの快適さとバッテリー駆動時間、そして低価格さをすべて備えているのは魅力的だ。本連載で採り上げた「ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J」以外にも、いくつもの製品が春までに登場する。どうやら部材調達と過熱気味の人気の両方で、Crover Trail搭載機はしばらく品薄気味となりそうだ。この流れは、「妥協しながらタブレットを使っていた人」をPCに引き戻す力となるだろう。

 同様に、2013年に登場すると見られるメインストリームのプロセッサーは、省電力性の面で進化を遂げるのは間違いない。2013年は本格的に、PCが「タブレットに逃げた人々」を取り戻す年となりそうだ。

タブレットは「高精細」「小型+低価格」
差別化要因は「ディスプレーの進化」に集約!?

 他方で、「PCでなくタブレットが欲しい人」にWindowsを選んでもらう理由は、まだ薄いかもしれない。それは、タブレットの世界がすでに別のトレンドへ移っているからだ。

タブレットの世界を変えたRetinaディスプレー搭載「iPad」

 ひとつのトレンドは「高解像度化」。3月に発売された「第3世代iPad」のRetinaディスプレーは、タブレットのコンテンツの世界を変えてしまった。その後登場した10インチクラスタブレットが、皆色あせて感じられたのは間違いない。1920×1080ドットのパネルを採用して対抗する製品も少なく、ようやく年末になって「Nexus 10」が、2560×1600ドットというより高精細なパネルで対抗してきた。

 2012年はアップルとGoogleが走るのを眺めているしかなかった各社も、2013年には一気に高解像度へと向かうのは間違いない。ディスプレーパネルの製造ラインは高解像度化へ向かっており、9インチ強から12インチくらいまでのパネルの高解像度化が、特に著しい。タブレットメーカーは各社とも、ここでの需要による単価アップに期待している。タブレットは間違いなく、iPadの解像度をひとつの基準に高解像度化していくし、PCも遅ればせながら、その波に乗っていくだろう。

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