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もしもツンデレ女子高生がBDを使うことになったら最終回

本や書類をらくらくデジタル化

ツンデレBDついに最終回!身の回りの書類をデータ化しよう

2012年12月26日 09時00分更新

文● 藤春都 イラスト●花園あずき

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試験の結果と恋の行方は?

 いくらドキュメントスキャナが優秀であっても、生徒会室に山積みの書類はあまりに多く、全部スキャンするにはそれなりの時間がかかった。

「葵さん、寝ないでくださいね、寝たら死にますよ!?」
「ほんとに紙に埋もれて遭難しそうよ……あ、このファイル、秋の文化祭のだわ」

 各クラスからの経費申請の書類やら領収書の束やら。

「そういえば文化祭の時に初めて、葵さんと僕で一緒にここで作業したんですよね」

 生徒会長に『段ボールに満載の写真をスキャンしろ』なんて言われて、でもその頃の私はパソコンなんかまったく使えなくて、結局こいつがやってくれたんだったわ。
 ……あの正真正銘の機械音痴だった頃から比べると、私は成長したと思う。

 それはこいつに教えてもらったからなのよね。
 期末試験の結果発表は数日後。──私は彼に何を返せる?

***

「……同点で一位……」

 放課後、掲示板を見に来た人たちでごった返す中、私は呆然と立ち尽くした。

「すごいね葵ちゃん、一位だよ!? 赤司君と一緒!」

 ありがとうでもちょっと黙っていてちょうだい。
 確かに自分史上最高の快挙よ。寝る間を惜しんで勉強した甲斐はあったわ。でも私が赤司に『勝つ』と言った、その言葉は達成されていない。

「葵さん、どうかしたんですか?」 「ぎゃー!?」

 不意に後ろからかけられた声に、私は悲鳴とともに振り返った。
 こいつがいきなり現れるのは今に始まったことじゃない。でも、どうやって顔を合わせたらいいのかもわからないときに出てこなくてもいいじゃないの!

「凄いじゃないですか。学年一位。過去最高記録ですよ」
「ええそうよ!」

 私はよほどの大声を発していたみたいで、赤司はおろか友達やクラスメートがいっせいに驚いた顔で私たちを見ている。
 私は慌てて赤司を引きずって人のいない階段の踊り場に駆け込んだ。

「どうせ私はあんたと違って馬鹿よ、頑張ったのに、あんたに何か教えてあげられるかと思ったのに……」

 言いながらぼろぼろと涙が溢れてくる。悔しい。本当に。
 赤司は静かに首を横に振り、私を落ち着かせるためかゆっくりとした口調で、

「僕に勝てなくても、葵さんには既に教えてもらいましたよ」

 その言葉に私は目を瞬かせる。

「僕は前からあなたを見ていたと言ったでしょう。小さなことに一喜一憂して、難しいことにでも挑戦して、わからないことは教えを請うて、無駄に見栄を張って……」
「あんた最後のは褒めてないわよ」
「頑張るあなたの姿を見ているのが、いちばん楽しくて、たくさんのことを教わった」

 ──ああ、そうか。
 私はなんと傲慢なことを考えていたんだろう。負けたらこいつが何かを得られるなんて。付け焼き刃で何かしようと思わなくたって、私たちはもう互いに相手から多くを学んでいた。

「ですから葵さんを見習って、僕も頑張ってみようと思うんです」

 そして赤司が私に差し出してきたのは、なんとペアの映画のチケットだった。

「なんというか、葵さん鈍いようなので……僕としてはいろいろアピールしてたつもりだったんですけど、伝わっていないようなので、いっそうの勇気と努力を」

 え……え……ええええええええええ!?

「聞いてないわよ!?」
「すみません、今まで直接言わなかったもので。好きです。そりゃもう」
「もうちょっと風情のある言い方しなさいよ!!」

 ああもう、ここでこういうことを言うかしらこの男!?
 ──ええ、そろそろ自分でもわかってるのよ。狭い部屋に二人きりの作業で文句を言わなかったのは、手作りのお弁当でお礼をしたのは、一位を取れなくて悔しかったのは。

「仕方ないわね。付き合ってあげるわよ、その映画」

 このとき彼が浮かべた笑みは、全校のファンの皆さんにお見せできないのが残念なほどの、それはそれは素敵なものだった。
 ……たとえ写真があっても見せないけどね。これは私だけのもの。

 

「それから。私は『今度の試験でぶち負かす』とは言ったけど、『二年の二学期の試験』とは言わなかったわよ。一ヶ月後でも一年後でも今度は今度よ。……『今度』こそ覚悟しておくことね!」
「ええ。期待してますよ」

 そして私たちは歩き出す。
 映画へと、そしてたぶんその後も一緒に。

おわり





著者紹介――藤春都

 ライトノベル書き。筑波大学図書館情報専門学群卒。特技は本を腹の上に載せたまま寝ること。企画書を没られたりプロットを没られたり細かな記事を書いたり色々してます。単行本は『ミスティック・ミュージアム』(第二回ノベルジャパン大賞<佳作>受賞作)、『空想/のべりずむ』、『瑠璃色の刃と朱色の絆』(すべてホビージャパンより刊行)。新作『天帝学院の侵奪魔術師《ドメインテイカー》』(HJ文庫)が発売中!

 ウェブサイトは『Claymore』、Twitterは@fujiharu

イラスト――花園あずき

 ドレスと猫をこよなく愛する漫画家。ペンネームが微妙に変わりました。単行本に『小公女(マンガジュニア名作シリーズ)』(学研教育出版)。『はやげん! はやよみ源氏物語』(新書館)が発売中!

 ブログ『本当は萌える!源氏物語』では、源氏物語の漫画を連載中。twitterは@genjihikaru

~前回のあらすじ~

前回は、フィルムのデジタル化に挑戦しました
すっかりいいムード…と思ったら、あれ? この後、葵から「今度の試験、あんたをぶち負かしてあげるわ」と宣言が

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