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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第110回

あのヒッキーPが実名でアルバムを発売!

ボカロシーンの鬼才を口説いたGINGAレーベルとは

2012年12月22日 19時00分更新

文● 四本淑三

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「上からな、順番に並べて行ったら、たまたまこうなったんじゃ」って
言うのは絶対イヤ

―― ネット専門のレーベルというと、以前「LOiD」というレーベルがあったんですが、御存知ですか?

曽根原 もちろん。でもこれを始めるまで知らなかったんです。コンピを作る時に、参加している子から「LOiDみたいっすね」って言われたんです。何それ、俺がオリジナルだと思っていたのにって。

―― ただ、昨今のレーベルとボカロ界隈の関係というのは、ある程度、商業的な目算があって成り立っているわけですけど、ここはそういう読みはなさそうですね。

曽根原 ないです、はい。

―― 音源を出すにしても、音楽出版で曲を預かるにしても、ニコ動の再生回数のようなものを基準にしている。要は数字を見て確実にリターンがあるものだけを狙う。それが今はスタンダードになってしまったんですが。

曽根原 それ、羨ましいです。ただ、ろくな死に方をしないんじゃないかなと思います、そういうことをやっていると。

―― と、言いますと。

曽根原 友達とか、家族とか、まだいないですけど自分の子供や孫に「おじいちゃんこういうことをやっていたんだよ」って、胸を張って見せられるものを作りたい。でも「それどうやって作ったの?」って言われた時に「上からな、順番に並べて行ったら、たまたまこうなったんじゃ」って、言うのは絶対イヤだと。

『「上からな、順番に並べて行ったら、たまたまこうなったんじゃ」って、言うのは絶対イヤ』という曽根原さん

―― いや、実によく分かります。そうですよね。

曽根原 「おじいちゃんが、これむっちゃカッコいいと思ったからなんだ」なら伝わると思うけど。ランキングの数字が根拠だなんて、ボカロ文化がどうの以前に、俺がムリ。だから再生数は、ある時から見なくなりました。

―― じゃあ曲はどうやって探したんですか?

曽根原 最終的にやったのが、にこさうんどでカッコ良さそうなタイトルとサムネイルの曲を落として、iPhoneで聴いて自分でレートを付けていった。基本、ニコ動で聴かなかったんです。そして自分の付けたレートの高いものをニコ動で検索して、そこで初めて、ああこの人なんだ! と。

―― 変な話ですがブラインドテストみたいな。

曽根原 今ウチで出しているぽわぽわとかは、そんなに再生数が行っているとは知らなかったし、ヒッキーは絶対超人気だろうと思ったら、「アンダーグラウンドボカロジャパン」タグの中では人気なのかもしれないけど、全体から見たら……。KTGさんにも声をかけたんですが、チーターガールで100万再生行ってることも全然知らなかった。

―― とはいえヒッキーは僕ら界隈というか、ニューウェイブのおっさん世代にも響くものありますけどね。

曽根原 そうそう、ASCII.jpにインタビューが載っていて、こいつやっぱすげえ有名なんだって勘違いしましたから。

―― あ、すみません……。僕らもニコ動の再生回数とは関係なく当たって行こうと、そういう姿勢でやっていたので。

(後編に続く)



著者紹介――四本淑三

 1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。


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