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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第109回

DSD形式のネイティブ再生ができるDS-DAC-10の開発者インタビュー【後編】

音がいいっていうのは、やっぱりたまらないんですよ

2012年12月15日 12時00分更新

文● 四本淑三

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そもそも1bitはなぜ音がいい?
DSDとPCMは何が違う?

―― ただ音の良さってなかなか伝わりにくいんですよね。そもそも1bitは何で音がいいんですか?

石井 いったんPCMに変換するという処理がなくなるぶん、間引きや補間を省けるので、位相特性などで有利です。変換処理を省けるのが音が良くなる理由ですね。

石井さんは大学で1bitの研究をされていたそうだ

坂巻 1bitって無駄のない効率的な技術なわけです。極端に言うと1bitで波形が上に進んだか、下に進んだかだけを記録して、それをマルチビットのPCMに変換するわけです。でも、せっかく1bitで録ったんだからそのまま保存しちゃえばいい。マルチビットのPCMに変換しなくていい。そういう考え方が1bitレコーダーの発想なんです。でも録っただけでは何もできないから、僕らはAudioGateというソフトを作って、1bitの生データをマルチビットに変換している。デジタルカメラのRAWで撮って、後でしっかり現像するという形に近いんです。

石井 それに1bitだとハードウェア上で扱いやすいんですね。それで1bitのまま、どれだけキレイに音が録れるのかという研究を進めているわけですが、2.8MHzより5.6MHzがいいと。

坂巻 このシステムの音がいいのは、AudioGateのアルゴリズムだと思います。僕らとしては、DAコンバータのチップの中でやっている計算より、パソコンのパワーを使って変換したデータの方が、元のデータの良さをより引き出しているだろうと考えているんです。そこが今、僕らが提案している1bitのポイントかなと。これはCDをパソコンに入れて再生すると、リアルタイムに1bitの5.6MHzに変換しながら聴けるんです。

―― それはCDをDSDに変換して再生するという話ですよね。それで音は良くなるんですか?

坂巻 音が良くなるというより、失われていた音が再現できるんです。もちろんDSDで録られたソースは滅茶苦茶いいですけど、やっぱりまだソースが少ないですから。今の時点ではCDなんかに記録されているデータを、限りなくそのままの形で吸い出すことがメリットかなと思っています。

DSDの音は歪みがないがゆえに逆に違和感も!?

―― ただ、DSDはアナログに近い音がすると言われる一方で、違和感を持つ人もいますよね。

坂巻 PCMは44.1、48、88.2とサンプリングレートを上げていくと、同じ傾向で良くなっていきますけど、DSDはハイがキレイすぎるのか、上まで伸びすぎるのか。聴こえ方が変わってきちゃうんです。

―― 永木さんはPCMのレコーダーもたくさんお作りなったと思うんですが、その辺はいかがですか?

永木 「パンチがなくなる」とはよく言われます。たぶん上の成分が良く聴こえるせいだと思うんですけど、真ん中の帯域が弱くなる感じがするって。ロックの録音なんかでは「今回はPCMの方が良かった」というお話もありますし、ハイレゾじゃなくてCDの方がいいという場合もあります。やっぱり向き不向きはあると思います。音がはっきり違うので。再現性という意味ではハイレゾのほうがいいんですけど、音には好き嫌いがありますから。

坂巻 パンチがなくなるという話は、ハイの歪みが取れるんですよね。僕らが知っているハットとかシンバルの音って、実は歪んでいるんですよ。それが無くなっちゃうんですね。ある程度歪んでまとまっている高い音が、DSDだと分離して聴こえるので、違和感があるんじゃないかなと思います。

永木 だからレコードを聴いていた世代の方の方が好まれるのかもしれないですね。

―― つまり喜んでいるのは僕みたいな年寄りと……。

坂巻 いやいや、でも小売店さんでも若い方が試聴されていたりしているので、年齢層は広がると思います。

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