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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第9回

iPadとiPhoneで変わる米国のショッピングシーズンと体験

2012年12月08日 16時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura

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SNSとモバイル決済で情報武装する屋台も登場
新しいショッピング体験

 我が家のすぐ隣のブロックは、道路が斜めに分岐するため、ちょっとした広場になっています。普段は道路なのですが、毎週水曜日の夜は「Off the Grid」、木曜日の昼間は「Farmers' Market」が開催され賑わいます。Off the Gridは10台ほどのフードトラックが集まって屋台村が作られるというもので、Farmer's Marketは近辺の農場の取れたての野菜を買うことができ、重宝しています。

 前者のフードトラックでは、フライドチキン、タイフード、メキシカン、アイスクリームやクレープなど、ラインアップにさほど驚きがあるわけではないのですが、毎日いろいろなところに移動してお店を開くため、TwitterやFacebook、そして位置情報SNSのFoursquareで武装しているのです。固定された場所がなくても、お客さんときっちりコミュニケーションを確保しています。

 彼らが使っているもう一つの強力な武器はSquareです(関連情報)。SquareはTwitter創業者が始めたモバイル決済プラットホームで、最近Starbucksと提携したことも話題になりました。iPhoneやセルラー版のiPadのイヤホンマイクに小さなクレジットカードリーダーを差し込めば、どこででもクレジットカード決済を行うことができるサービスです。

 フードトラックをはしごしながら食事を楽しむOff the Gridでは、ふさがっている手で紙幣やコインを数えるよりは、カードを渡した方がよっぽどシンプルですよね。日本人の感覚だと少額決済は現金でと思うのですが、米国で暮らしていると、少額こそカードが便利と思ってしまいます。結果的にはコインランドリーで使う大量の25セントコイン以外のほとんどすべての決済をカードで済ませている生活になっています。

 日本でも、iPhoneを決済端末に変えるサービス「Coiney」(コイニ、、http://www.coiney.com)がスタートしています。プロダクトデザインなどを担当する久下玄氏は「例えばアートの即売などより高額な決済が必要な現場でも受け入れられている」と話します。それもまたその通り。高額の現金を持ち歩くのは日本でも米国でもナンセンスになりつつありますし、一目惚れや衝動買い、もしくは「今しか変えない」と思ったときにも、カードが役立ちます。

iPhoneやiPad、iPod touchをクレジットカード決済端末に変えるCoiney

 モバイルでECが盛り上がる現状はありますが、一方で、目の前でものを選んで、買って、帰ってきてすぐに開封したい、という楽しみもまた、ショッピングにはあります。これはEコマースのサービス、オンラインクレジットカード決済への信頼性への不安とは違う意味での、リアルなお店でのショッピング体験の楽しさと言えます。

 お店でのバーチャル体験なども面白いアイデアがたくさんありますし、Kickstarterのような世の中にまだない商品に少額出資の形でプロジェクト支援をし実現させるという体験も、ショッピングの1つに加わってきました。将来のショッピングのスタンダードを作るには、我々にはもっと多様な「経験」が必要なのかもしれません。

店頭で手に入れて、すぐに開封する楽しさもまた、ショッピング体験


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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