2014年にARMベースOptronを量産するには、
28nmプロセスが現実的
AMDの声明はARMプロセッサーを作ることだけではなく、2つの重要な点も発表されている。
- ARMベースのOpteronは、先にAMDが買収したSeaMicro社の持っていた「Freedom Fabric」というプロセッサー間接続技術を利用する。
- これとは別に、AMDは引き続きx86 CPUとAPUの設計を継続する。
この声明からは、いくつかの明言されなかった点もわかる。まずAMDは、ARMから「ARMv8」の「アーキテクチャーライセンス」を受けたわけではなさそうだということ。アーキテクチャーライセンスについては、連載178回で説明しているので割愛するが、もしアーキテクチャーライセンスを受けていれば、そう言うはずである。発表とその後の質疑応答でも、あくまで「ARMテクノロジーベースのプロセッサー」という言い方に終始したあたり、単に「Cortex-A57/A53」のCPUライセンスを受けたに留まっていると考えられる。
またこれを実装するのは、やはり28nmプロセスと考えられる。今のスケジュールでは、20nmプロセスを利用した製品を2014年中に量産できるかはやや微妙だからだ。20nmプロセスはTSMCとGLOBALFOUNDRIESがどちらもアナウンスしており、一応2013年には量産に入れるというのが現在の見込みだ。
だが、やや先行していると思われるTSMCですら、28nm世代では製品の量産開始から、本当に顧客が28nm製品を量産できるようになるまで、1年以上のタイムラグがあった。20nm世代もファウンダリの言う「2013年スタート」に懐疑的な顧客がほとんどである。逆に言えば、2014年に確実に量産するためには、28nmが現実的な選択肢ということになる。
「SeaMicroのFreedom Fabricと組み合わせるのが前提」というくだりからは、このARMベースOpteronが従来製品とは異なる使われ方を想定していると想像される。それはどんなものかというのが、今回の本題である。
ARMベースサーバーが狙う分野とは
上のスライドは6月のAFDSで、AMD CTOのマーク・ペーパーマスター氏(Mark Papermaster)が示した、向こう3年間のサーバーロードマップである。ここでわかるのは、従来型のサーバー(Traditional IT)は次第に減少傾向にあることがわかる。その一方で、「HPC」(High-Performance Computing、大規模科学技術計算)はやや増えており、これにもまして「Virtualization」(仮想化)と「Cloud」が大きな伸びを見せている。
Traditional ITはこれまでのシングル/2プロセッサー向けOpteronが担ってきた部分。HPCはOpteronにGPU、最近ではAMDのFireStreamやNVIDIAのTeslaなどを組み合わせたケースが普及を見せており、今後もこの組み合わせが広く利用されてゆくと思われる。
VirtualizationはCloudと混ぜて議論される場合もあるが、ようするに物理的なサーバーを大量に並べる代わりに、高性能なサーバーを少数置いて、ここの上で仮想サーバーを動かす。あるいは、企業がPCを大量に並べるのではなく、サーバー上で仮想PCを動かして、これを安価なシンクライアントで利用するといった取り組みである。この部分もやはり、従来型のOpteronがそのまま利用されることになるだろう。
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